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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラと俺-1

振り返れば俺の人生は、特に大きな山も谷もなく。


そんな地味な人生を送っていた俺は、これからもずっとそんな変哲のない道を歩み続けて行くのだろう、なんて漠然と思っていた。


彼女イナイ歴イコール年齢。ひたすら地味な立ち位置。


大人になった今だって、酒は多少飲む程度、タバコは喘息の気(け)があるので吸ったこともない。


そんな俺は、目立った反抗期もなければ、ましてや喧嘩なんてしたこともない。


そんな非常に地味で穏やかな日々を送っていた俺が、まさか人前で喧嘩ごとをするなんて。


大きくついたため息が、天井に吸い込まれていく。


すっかり日が暮れてしまったのに、電気を点ける気力すら出ない俺は、ただ部屋のベッドで仰向けになったまま、暗い天井をぼんやり眺めていた。


頭の中を過ぎるのは、さっきの吉野家での乱闘騒ぎ。


俺に泣きながら土下座をする和史くんの顔ばかりが勝手に思い出されると、自然と苦虫を噛んだように奥歯が鳴る。


今でも奴のしたことは、人として許しがたい、と思う。


地味な人生を送ってきた俺だけど、人間関係にはソコソコ恵まれていただけに、あんな鬼畜なことができる人間が身近にいたことを思うと、奴を殴った手が、未だに怒りで震えるのだった。


コロンと寝返りをすれば、今度は茜の顔が過ぎる。


茜の笑顔を思い出せば、怒りで震えていたのが一変、涙が勝手に滲んでくる。


和史くんに対する怒りより、茜のことを考える方が辛くて、できることならアイツのことは考えたくない。


なのに、振り払えば振り払うほどに、頭の中は勝手にアイツでいっぱいになってばかりだった。


茜、どうなっちゃうのかな。


泣いて謝る和史くんは、結局遠距離の彼女を選んだ。


それはそれで仕方ないとは思う。


ただ、茜だけが傷ついて終わることを考えると、どうにもやるせないのも事実。


ならば、遠距離の彼女にも事実をありのまま突き付けて、何もかもぶち壊してやりたかった。


でも、それが出来なかったのは俺の弱さだ。


俺が何もかもをぶち壊してしまったら、遠距離の彼女はどうなる。


また一人、傷つく人間が増えるだけだ。


結果、和史くんにとって一番都合のいい展開を選んでしまった俺は、


「茜を傷つけないように終わらせろよ」


としか言えなかった。








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