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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラの彼氏-3

すると鈴木は案外あっさりと、


「ああ、そうなんだ。悪かったな、勝手に決めつけてしまって」


と謝ったので、なんだか拍子抜けした。


もっと、ちゃんと否定したかった。


茜は単なる幼馴染みで、女として見たことなんて一度もないし、これからもそれはあり得ない、と。


なのに、鈴木はそんなの興味がないと言わんばかりに、スマホをいじり始めている。


おそらく彼女からLINEでも来たのだろう。


慣れた手つきでスマホをスライドさせている、鈴木の細長い指をぼんやり見つめながら、言いたいことの全てが言えなかった俺は、


「茜は彼氏ができて幸せなんだから、俺は関係ねえんだよ」


と、まるで自分に言い聞かせるみたいに、ボソッと呟いた。


「あ、何か言ったか?」


「いや、何でもねえよ」


スマホから顔を上げた鈴木に聞き返されたけど、黙って首を横に振る。


すると、鈴木は彼女へメッセージを送るべく指で画面をなぞるのを再開した。


鈴木がLINEを送れば、すぐにポーンと着信音が鳴り、すぐさま返事をし、また着信音が鳴る、そんなやり取りがしばし続いていた。


……茜も、こんな風に彼氏とやり取りをしているんだろうか。


考えてみれば、俺と茜はメールもLINEもほとんどしない。


するとしても、「今から元気の家行く」とか「来る時酒のつまみ買ってきて」とか、そんな事務的なやり取りばかり。


これがもし彼氏の和史くんだったら、絵文字とかふんだんに使ったラブラブな文章でも作るんだろうか。


「何してる?」とか「今日は寒いな」とかそういう何気ない会話を。


俺は、女の子と付き合ったことがないから、そういうやり取りをめんどくさそうに思う反面、それが羨ましいと思うことも正直あった。


俺だって健康的な若い男だ、彼女が欲しいって思う時はある。


だから、合コンなんかに参加したりしたこともあった。


そういう場にやってくる女の子は、明るくて可愛くて、女の子らしくて、細くて、茜とは対極にいるようなタイプの女の子が多くて、合コンの始まりこそめちゃくちゃテンションが上がるのだが。


でも、茜よりも遥かに可愛い女の子達が、綺麗に着飾って、料理を取り分けてくれたり、はたまたカラオケなんかで流行りの女の歌を歌っているのを見てると、なんだかどうしようもなく退屈になってくるのだった。


そんなきゃりーぱみゅぱみゅみたいな軟弱な歌じゃなくて、もっと野太い、長渕剛を無性に聞きたくなるのだ。


可愛い女の子の歌よりも、茜が歌ってくれる長渕剛を。


飽きもせずにスマホをいじり続けている鈴木の横顔を、俺は頬杖つきながらぼんやり眺めていた。




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