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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラの彼氏-2

「ふーん、そうだったんだ。オレはてっきりムチムチタイプの女が好きだとばかり」


「んなこと言ったことあったかよ」


少し冷めたお茶を飲みながら、好きな芸能人とかアイドルを思い浮かべるが、ムチムチタイプには該当しない。


「いや、だってさお前いつもあの幼馴染の娘と一緒にいただろ? ほれ、なんつったっけ、あのぽっちゃりした……」


「……茜?」


「そうそう、茜ちゃん茜ちゃん!」


俺が名前を出してやると、奴はすっきりしたように手をパンと叩いた。


鈴木は茜とはあまり顔を合わせたことは無いけれど、彼女のことはわりとよく知っている。


曰く、俺の話題には必ず茜が出てくるから、否が応でも茜のことを知ることになったからだとか。


そんなに茜のことなんて話題にしたことなかったはずなのに。


だけど、今ここでアイツの名前が出てくると、なぜかギリリと奥歯に力が入る。


俺と茜は、何の関係もないってのに。


密かに奥歯を噛み締めている俺に、鈴木が更にとどめをさすかの如く、


「オレは元気が茜ちゃんと付き合ってるから、ムッチリ系が好きだって思ってたんだけど」


なんて言うもんだから、俺の頭の中の何かの糸がプツッと切れた。


勘弁してくれ。幼馴染で一緒にいることが多いからって、なんですぐに男と女の関係にしたがるんだ。


そう怒鳴りつけたかったけど、すんでの所で堪える俺は、お茶と一緒に言いたいことを飲み込んだ。


少ししか残っていないお茶は、やけに濃くて苦い味だ。


それを一気に飲み干した俺は、大きく深呼吸をしてから、なるべく普段通りを意識して、


「勘弁してくれー、なんで俺があんなカピバラなんかと? 俺、面食いなんだよ」


と、ケラケラ笑ってみせた。


そうだ、俺はダサいしかっこ悪いし、スタイルもよくない男だけど、理想だけはいっちょまえで、可愛い女の子が好き。


そんな俺が茜と付き合っていると思われるなんて、迷惑千万なのである。




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