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海の香りとボタンダウンのシャツ
【OL/お姉さん 官能小説】

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海の香りに包まれて-3

 洋輔は胸に抱いた美紀の髪を撫でながら言った。
「水泳部きっての女たらし、って呼ばれた俺がこんなこと言っても信用されないかもしれないっすけど」
「うん……」
「今まで誰を抱いても満ち足りたことがなかったっす」
「ほんとに?」
「身体は気持ち良くても、なんか……気持ちが醒めてたっつーか」
「だから逆にいろんな子を抱けたのかもね」
「なるほど、そうかもっすね」

「今までつき合った女の子には、めちゃめちゃ失礼なんすけど、どの子ともエッチはあんまりどきどきしなかった」
「どきどき?」
「身体の中に溜まった欲求を吐き出したくて抱いてた感じがするんですよね。あ、軽蔑しますよね」
「する。そんな気持ちで抱かれてる、ってわかったら、オンナだったら拒絶するよ」
「ですよねー」洋輔はばつが悪そうに眉尻を下げた。「軽い気持ちで声かけて、何となくつき合って、身体の関係になるのは、その流れ、っつーか一種のルーチンワークっつーか」
「女たらし」美紀は鋭く洋輔を睨んだ。
「すんません……」
 洋輔はしゅんとして、ひどく申し訳なさそうな顔をした。
「でも、美紀先輩は全然違う。俺、今でもどきどきしてますもん」
「嘘ばっかり」
「ホントですって!」洋輔は美紀の頬を手で包んで、自分の方に向けた。「先輩は俺が唯一抱きたくてどきどきする女の人なんすよ」
 それから洋輔は美紀を抱きかかえ、自分が下になって身体の上に乗せさせた。
「初めての時も、今も」
 美紀はひどく切なそうな目で洋輔を見つめた後、恥ずかしげに目をそらした洋輔の鼻をつまんで顔を自分に向けると、乱暴に唇同士を重ね合わせた。

「久宝君って、よく見るとイケメンだね」唇を離した美紀が柔らかな笑みを浮かべて言った。
「え? そ、そうっすか?」
「大学の時からかわいいって思ってはいたけど。何か、」美紀は身を起こし、洋輔に跨がったままその赤くなった顔を見下ろした。「成長したっていうか、頼もしくなった、って言うか」
 洋輔は顔をほころばせた。「嬉しいっす。美紀先輩にそう言われっと」
「久宝君って、キスが上手」
「え? なんすか、いきなり」
「そのキスで、たくさんの女の子を落としたんでしょ?」美紀は口角を上げた。
「ち、違いますよ」洋輔は慌てて否定した。
「あたし、男の人とキスしたこと、まだ数回しかないし、全然慣れてないんだけど、貴男のキスが一番気持ちいい」
「そ、そうなんすか?」
「うん。っていうか、ほかの人との時は緊張しちゃっててよくわからなかった」
 洋輔は照れたように笑った。

「でも、あの初めての夜、」美紀が言って、申し訳なさそうに瞬きをした。「久宝君と繋がった時はあたし、とっても痛かったし苦しかった。ごめんね、今になってこんなこと」
「いえ、」洋輔は下になったまま美紀の腰に手を当てて、ゆっくりとさすった。「そりゃそうっすよね。初めてだったんだし……」
「でも出血はしなかったんだよ」
「だから俺も気づかなかったんす。ゴム外した時、もし血がついてたらわかってた」
「あたし、正直ほっとしたんだよ。貴男に気づかれなかった、良かった、って」
「俺、気づいてあげたかったっす。そうすりゃ、その時コクることもできたし」
「いやだよ」美紀が言って、洋輔から身を離し、再び彼の横に身体を横たえた。「バージン奪った責任とってつき合ってもらっても嬉しくない」
「そりゃそうでしょうけど……」洋輔は決まりが悪そうに頭を掻いた。そして身体を起こし、美紀の中で力を使い果たしたペニスからコンドームをはずし、口を結んだ。美紀は枕元に置いていたティッシュの箱を手にとって差し出した。
「あ、すんません、先輩」
 使用済みのコンドームをティッシュに包みゴミ箱に放り込んだ洋輔は、再び美紀に寄り添うように横たわった。

「もし、」美紀は洋輔に顔を向けた。洋輔も美紀の目を見つめ返した。「あの男がまたやってきたら、追い払ってくれる?」
「当然っす」洋輔はきりっとした顔で返した。「俺、これからずっと美紀先輩を守り抜きます」
 美紀は噴き出した。「大げさ! でも嬉しい」
 洋輔はぎこちなく微笑みながら髪をそっと撫でた。
「ねえ、久宝君」
「なんすか?」
「『大好き』って言ってもいい?」
「えっ?」洋輔はにわかに顔を赤くした。そして慌てて言った。「お、俺が先に、」
 言いかけた洋輔の言葉を遮って、美紀は叫んだ。
「大好き!」
 そして洋輔の裸の胸を力一杯抱きしめた。

――the End
2015/11/19 S.Simpson

※本作品の著作権はS.Simpsonにあります。無断での転載、転用、複製を固く禁止します。
※Copyright © Secret Simpson 2015 all rights reserved


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