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海の香りとボタンダウンのシャツ
【OL/お姉さん 官能小説】

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月下氷人-5

 ケータイをベッド脇のサイドテーブルに載せたケンジは、ドレッサーから立ち上がったミカに言った。
「おそらく、俺たちの思っている通りだ」
「久宝は今の彼女と別れたがっていて、別に本命がいる」ミカが言った。「そういうことね?」
「ああ。その本命は十中八九美紀先輩。」
「その判断は確かなの? ケンジ。久宝の口から美紀の名前が出てきたの?」
「いや」ケンジは隣に座ったミカの肩にそっと手を置いた。「キーワードは『シースパイス』」
「美紀が大好きなあの石けんの名前を久宝が?」
「あいつの部屋にも置いてある。自分でそう言った」
「そうなんだ」
「久宝がそんなしゃれた石けんを自分の部屋に置く訳がない。君もそう思うだろ?」
「確かにね。あいつにはかなり不釣り合いだね」
「ヤツが美紀先輩んちに泊まって、勢いで先輩を抱いた時、たぶんその香りがしてたはず」
「それをあいつもずっと忘れてないってことかな……」
「先輩を抱いて、想いに火がついたその夜の気持ちを、あの石けんの香りで思い出したいんじゃないかな」
「もしそうなら、あいつがいくら彼女を作っても、その子に本気になれるわけないか」
「失礼千万だよ、まったく……。本気になれない相手と簡単に付き合えるあいつの感覚がわからない」
「あなたの言う通りだね」

 ケンジはミカに身体を向けた。
「どうする? ミカ」
 ミカは顎を手で支えて考えた。
「俺たちで後押しできないかな、二人の」
 ミカは顔を上げた。「今度一緒にエルムタウンに行かない? ケンジ」
「一緒に?」
「そう。あたしが美紀の、あなたが久宝の相手をする」
「そして引き合わせるんだね?」
「うまくいくといいけど……」


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