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秘密は21号室で
【同性愛♀ 官能小説】

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憂うつな春-1

第1話 憂うつな春

清楚なお嬢様が丘の上で一休みしている。
彼女は自転車を漕いで長い坂を登り、丘の頂上までたどり着いたところだった。
彼女の名は弘美という。
ポニーテールの髪から見える白いうなじをハンカチで押さえる。
春が終わり、梅雨の季節にはちょっと早かったが、今日は初夏を思わせる陽気で汗ばむくらいだ。

丘の向こうに目を向けると、遠くの山並みが稜線を描いている。
人工的な構造物を探すと、山の合間に建つ高圧電線の鉄塔だけだ。
先日卒業した高校まで東京で生まれ育った弘美にとって、それは物足りない風景だった。

(まるで田舎をサイクリングしているみたい)

弘美はサイクリングを楽しんでいるわけではなかった。
広大な敷地面積を誇るこの大学のキャンパスでは、学生は移動のために自転車を使うのだ。

弘美はこの春に大学に入学した新入生だった。
しかし、田畑に囲まれた地方にあるこの大学は志望の大学ではなかった。
東京の有名大学を希望していたが不合格になってしまった。
浪人して翌年に再チャレンジするつもりだったが、親は現役で合格したこの大学へ行けと言う。

「お父さん、浪人しても良いって言っていたじゃない?話が違う!」

「弘美、そういう意味で浪人しても良いと言ったんじゃない」

娘より親の方がこの大学を気に入っていた。
親は娘の受験が始まった頃は浪人を許す意向だったが、日程の都合で併願したこの大学に受かったことで気持ちが変化したのだ。
弘美の脳裏に父親から言われた言葉がよぎった。

「田舎にあるというだけの話で、あそこは世間的に見ても定評のある大学だ。お父さんの会社でも、あの大学を出ている方は皆さん立派な人たちばかりだ」




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