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海の香りとボタンダウンのシャツ
【OL/お姉さん 官能小説】

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忘れられない香り-6

「洋輔くん、そんな匂いが好き? 『シースパイス』」
 はっと我に返り、自分の顔を覗き込んでいた杏樹に目を向けて、洋輔は慌てたように言った。「え? あ、ああ」
「私、それよりこっちの『はちみつマーチ』の方が好き」
「そうか……」
「っていうか、私、この店、匂いがきつくてあんまり好きじゃないな……」
「ご、ごめん」洋輔は手に持っていた青いブロックを、慌てて元に戻した。「出ようか、杏樹」
 そして彼は杏樹の手を引いてその店を後にした。


 洋輔と杏樹が歩いていた通りを抜けた所に、ひときわ大きな建物が建っていた。二年前に新しくできたシネマコンプレックスだった。
 洋輔はチケット売り場に立っていた。
「まだ上映まで30分ぐらいあんな……。何か飲むか? 杏樹」
「そう言えば喉渇いたね。私タピオカドリンクがいいな」
「おし」

 このシネコン『シネマパーク・エルム』は、広い入り口を入るとドーム状の大きなエントランスホールがあり、それを取り囲むようにいろいろな飲食店が軒を連ねていた。いわゆる『フードコート』だ。そのフロアの中央付近にイベント用の小さなステージと、その周りには数十客のテーブルが置かれている。その日は特にイベントも予定されていなかったので、そのテーブルでくつろいでいる客はそれほど多くなかった。
 映画館エリアへの入り口脇のチケット売り場の丁度反対側に、水色の看板のタピオカドリンクの店があった。洋輔と杏樹はそのカウンター席に並んで座った。


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