投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

海の香りとボタンダウンのシャツ
【OL/お姉さん 官能小説】

海の香りとボタンダウンのシャツの最初へ 海の香りとボタンダウンのシャツ 0 海の香りとボタンダウンのシャツ 2 海の香りとボタンダウンのシャツの最後へ

忘れられない香り-1

 洋輔は、恋人杏樹と二人で街の大通りの歩道を歩いていた。その通りは車の通行量も多く、常に排気ガスの匂いがビル風の中に渦巻いていた。
「空気がよどんでる……」
 杏樹が言った。
 洋輔は彼女の腕が絡んだ自分の右腕をちらりと見た。「んだな。この辺に住んでるやつの肺はきっと汚れてっだろうな、スモーキーに」
「洋輔くんたら」杏樹はくすっと笑った。
 交差点の横断歩道の前に立ち止まった時、杏樹は洋輔のボタンダウンシャツの袖を握ってバランスを取りながら、右足のヒールを脱ぎ、中に入っていた小石を振り出した。
「前からこんなに賑やかだったの?」
「俺が大学に通ってた頃はここまで車は走ってなかったなー。だけど俺んちあたりの賑やかさは変わんねえな」


 久宝洋輔(29)はこの春楡(ハルニレ)町の一角、夜になるとにわかに賑やかさを増す歓楽街のど真ん中に古くからある『居酒屋久宝』の一人息子だった。今、恋人の杏樹と歩いている大通りを北西に1kmほど行った所に保健体育系の『尚健体育大学』があり、彼はそこの健康科学科に在学していた。この大学が町のほぼ中心に広大な敷地を持っているため、その周辺にはテニスコートや公営プール、武道館や乗馬クラブなどのスポーツ関連施設、フィットネススクール、そしてスポーツ用品店が数多く点在していた。そのお陰でアクティブな若者も多く住み、夜の歓楽街も、特に休日前後になると多くの人で溢れる活況を見せていた。巷の人々は、この『春楡町』の一番の繁華街である二丁目から三丁目にかけてのエリアを特に英語読みで『エルムタウン』と呼び、その呼称は若者だけでなく、ここに暮らし、また集う人々に広く浸透していた。

 洋輔は大学卒業後、何となく家業の居酒屋を手伝ったりしてのらりくらりと過ごしていた。経営者の両親からは常々居酒屋の跡を継ぐか、どこかに就職するかさっさと決めろ、と言われていたが、彼は軽く受け流していた。
 気まぐれでアルバイトしていた町外れのコンビニで知り合った斉藤杏樹(25)は、今まで彼がつき合った中では一、二を争うほどの静かな雰囲気の女性だった。口数も多い方ではなく、いきおい話は弾まなかった。だが、その笑顔は温かく、何かイライラすることがあってもそれを忘れさせてくれるような癒しをもらえた。彼女のどこに惹かれたかと問われれば、洋輔それを真っ先に答えただろう。彼女からの申し込みをOKしたのも、そういう今までにない新鮮さを味わってみたいと思ったからだった。正確に数えたことはなかったが、杏樹は洋輔にとって15、6番目の交際相手だった。


海の香りとボタンダウンのシャツの最初へ 海の香りとボタンダウンのシャツ 0 海の香りとボタンダウンのシャツ 2 海の香りとボタンダウンのシャツの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前