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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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卒業のその後に-1

【卒業のその後に】

踵を返して星司の元を去る悠子の背中には、今までに感じた事の無い力強さが溢れていた。星司は、突然現れたその悠子の力強さに驚き、別れ際の言葉をついつい掛けそびれてしまった。その悠子の姿が見えなくなると、星司の胸は、何故か無性にざわつき始めた。

漠然とした不安を抱えたまま帰宅した星司は、とりあえず悠子にメールを送信したが、いつもは直ぐに返ってくる返信は返ってこなかった。時間を置かずに携帯電話に連絡も入れてみたが、これもいつものように直ぐに出る事はなく、十数回のコールの後、留守番電話に切り替わった。無機質なアナウンスが流れる最中に、星司は何を残そうか迷ったが、出てきた言葉は短かった。

「折り返して欲しい…」

雄一に電話をしようかとも考えたが、姉の事には異様に神経過敏な雄一に、悠子の様子を聞く事は憚れた。

落ち着かない。何故そのまま見送ってしまったのか。

直ぐにでも悠子の元に行きたかった。しかし、この夜は、星司が投げかけた『各務家の後継者問題』で、親族が集う会議が開かれる予定だった。勿論、当事者の星司がこの親族会議を抜けるわけにはいかなかった。

その会議の最中も、幾度も携帯電話を取り出して確認してみたが、悠子からの返信は無かった。出口の見えない会議は深夜に及んだが、結論は見出せないまま散会となった。

会議終了後の深夜、もう一度悠子にメールを送信し、更に電話を掛けてもみたが、今度は電源が入っていなかった。星司は悠子からの返信を待ちながら、眠れない一夜を過ごした。

この時、躊躇せず悠子の元へ行かなかった事を、星司は後々後悔する事になった。悠子は自らの意志で2人の前から姿を消していた。

悠子が姿を消したと言っても、流石に継母と弟の雄一の居る実家には連絡は入れていた。しかし恋人である星司と、親友のはずの陽子に連絡が入る事は無かった。

星司は悠子の情報を求めて、雄一の元に毎日顔を出したが、悠子は自身の弟にさえ、行方を知らせてはいなかった。心を読むまでもなく、雄一の心配気の表情を見れば、それが嘘でない事はわかった。

「そうか…」

星司の表情は曇った。

「アニキ…」

雄一は星司の落胆の表情を見ても、掛ける言葉は思い浮かばなかった。

ここ数年の悠子は見違えるほど明るくなっていた。残念ながらそれが雄一では無く、星司の影響が大きい事は否めなかった。

少年時代の雄一は、それについて落ち込んでいた時期も有った。しかし、大好きな姉の明るい笑顔を見ている内に、姉にとって何が一番いいのかを考えるようになった。また、星司が悠子の事を第一に考え、脆い悠子を優しく包み込んでいる事も肌で感じ、星司に対する態度を徐々に改め、今では星司を実の兄のように信頼さえしていた。

2人はそのまま結婚すると思っていた。

しかし、その星司の優しさを享受していた姉が、何故か星司から突然距離を置きはじめた。日々憔悴する星司を見るにつけ、姉の理不尽さを感じもするが、雄一にもどうする事もできなかった。雄一は肩を落として帰る星司を見送る日々が続いた。頼もしかったはずの星司が、弱々しく落胆する姿を見るのは雄一には辛かった。


(家の力に頼ろう…)

星司は、幾度も各務家の情報網で探そうと考えたが、結局、悠子との結婚に懐疑的な各務家の協力を得る事はできなかった。

また、仮にそれによって悠子を探し当てたとしても、姿を消してまでも『会わない』といった頑なな意思表示に、どう対応していいかわからなかった。

星司は悠子からの連絡を待ちつつ、雄一に対する悠子の定期的な連絡の中から、少しでも何かを掴もうと思い、雄一の元に通い続けた。


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