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春雷
【女性向け 官能小説】

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フリージア-2


那由多のマンションに訪れるのは決して初めてじゃない。
初めてじゃないけど、初めて以上に緊張してる。

エレベーターに乗る寸前、不意をついて逃げようという選択も出来たのに。だけど、私の頭の中は異常なくらいの緊張で真っ白になっていて、まるで地に足がついていない状態だった。

部屋のドアが開けられて、那由多が私を見て表情を緩めた。

「安心しろ。本当に嫌なら、絶対になにもしないから」

私の異常な緊張を察してくれたのか、穏やかな声色で迎えてくれる優しさがなんだかズルいなと思いつつも、突発的な事をしても嘘をついて傷付ける事はしない人だってわかっているから、部屋に入る事を拒む理由は見当たらなかった。

相変わらず掃除の行き届いた部屋…というより、なんだか生活感のない殺風景な部屋だ。
淡いグレーの絨毯が敷かれたリビングには、濃いグレーの布製のソファーと小さめのガラスのテーブル。ソファーと同色のテレビ台とテレビだけ。

リビングに繋がるダイニングは、カウンターテーブル式のシステムキッチン。一人暮らしには贅沢過ぎるくらいの広さだ。

(これが独身寮だなんて…羨まし過ぎる待遇だよなぁ)

オーナーから料理長のみに与えられた特権。そのひとつがこの素敵なマンションの一室にタダ同然で住める事だ。

立ったままでぼんやりと部屋を眺めていたら、

「ヒカリ…」

後ろから抱き締められて、現実問題に引き戻されて体が強張った。

「やっぱり嫌か…?」

そんな那由多の申し訳なさそうな声色に、

「…嫌じゃないよ。ただ、ちょっと怖いだけ。だって…その……そういう事今まで一度もしたことないし…」

恥ずかしいけど、未知に対しての怖さを口にしたら、

「ダメだ。もう無理だ」

「えっ!! ちょっ!! 待って那由多!!」

「いや悪い、無理」

笑って抱き抱えられて、寝室に運ばれて、ベッドに下ろされると、

「ヒカリ…」

求められるように、好きだと囁かれるように名前を呼ばれて、唇を求められる。それだけで思考が白く霞んで胸の奥がどうしようもなく甘く軋んでしまう。

口内を撫でられるような、まるでひとつになりたいと絡まるような濃厚なキスに、喉の奥から小さな声にならない熱い息が漏れて、恥ずかしくて体までが熱くなってしまうのに、心の中ではもっと欲しがってる。そんな自分に気付いて、更に恥ずかしくて益々全身が熱くなっていく。

キスを受けながら、ブラウスのボタンが外されて、ブラのホックも簡単に外されてしまった。本当はあまり見られたくない、無駄に脹らみ過ぎて太ってみえちゃうこの胸が好きじゃないのに、

「お前…想像以上に着痩せするタイプだな…」

「やっ――!!」

「なんだよ…反則だろ…このデカさと触り心地…」

「――っあっ…っ! ゃ…ぁあ…っ…!!」

「あぁ…ヒカリの胸…気持ちいいよ…スゲエ好きだ…」

「ぁあ…んっ!!」

両胸を那由多の熱い大きな手に包まれて、敏感な胸先を口に含まれ、水音混じりに弄ばれると、気持ちよさで思わず嬌声が漏れてお腹の奥が蕩けるようにじわりじわりと疼いて、身が捩れてしまう。

「ひゃっ――!! んんっっ!!」

胸先を指で撫でつままれながら那由多の唇が這うように腰元を撫でてくると同時に、スカートのファスナーが下ろされて、黒いタイツも足から取り除かれてしまった。

最後の一枚が脱がされる事が恥ずかしくて、抵抗をしようと力が入ってしまった私の太股を優しくほどくように指先で撫でながら、

「ヒカリ…」
「ぁ……ふ…ぁ……ん……」

愛おしげに名前を囁かれ、唇を重ねて舌で口内を撫でられると、頭が痺れを帯びて足の力が抜け落ちた。
那由多の指先が、熱を持って蕩けそうな程に潤んだ下肢の下着中央に触れた。それだけで涙目で体が大きく跳ねてしまいそうになるのを堪える私を見て、

「我慢しなくていいからな。この部屋の壁はかなり厚いし、二人きりなんだから」

「でも…」

「恥ずかしがらなくていいんだ。オレだけしか知らないヒカリが見れて、ヒカリを感じて、オレだって…な?」

少し照れ臭そうに、潤みを含む那由多の瞳を見て、さっきから気付いてたけど気付かないふりをしてるものに嫌でも意識が行ってしまう。私の腰の下辺りに当たる、硬くて時折脈を打つように張りつめてる那由多の熱いものに。

「…触ってみてもいい…?」

怖々とそこに手を伸ばして、そっと触れたら、一瞬ピクリと那由多の体が揺れた。
何をどうしたらいいか…。全くの無知ではないけど、経験がない私には実感しての理解はできなかった。

「てか…那由多だけ服着たままなんてズルくない? こういう場合は私が脱がせたらいいのかな…?」

そう尋ねたら、

「いや、自分で脱ぐから」

小さく笑ってベルトを外した。そんな那由多をじっと見てたら、

「…あんまり食いつくように見るなよ…」

「――んっ!」

照れ臭くなったのか、キスで誤魔化すように、目を閉じるように促された。




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