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あるお伽噺
【ファンタジー 官能小説】

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盗賊サミュエル-9

男の一人がそう言うと、サミュエルは冷たく言い放った。

「―――それは有難いことだな。」

サミュエルは瞳を鋭く光らせて、男たちを睨み付ける。

「誰が、こいつに近づいていいって言った?」

2人は顔を見合わせて、へへへっ・・・と不気味な笑いを浮かべる。
すると一人の男が隠し持っていた剣で、突然サミュエルに襲い掛かって来た。


「お前の言う事なんか聞けるか!ガキのくせにもう勘弁ならねぇ、
お前を殺して俺がボスになってやる!!!」

しかしサミュエルは向かってきた男たちの剣を難なく交わすと、
逆に腰から剣を引き抜いて男の首を刎ねた。
一瞬の出来事だった。

もう一人の男が、サミュエルに敵わないと逃げ出そうと後ろを向いた瞬間、
同じように彼の剣が男の首をめがけて振り下ろされた。

2人の死体が、サミュエルの前に無造作に転がっている。
慣れた手つきで、剣についた血を拭い、投げた短剣を拾うと、
彼は自分が殺した部下をまたいで、呆然と立ち尽くすティアラの元に近づいてきた。


「早く顔も隠せ。」


彼は布を差し出したが、ティアラは受け取らなかった。
動かないティアラにサミュエルはまたイラつきながら、さっさと頭に布を被せて、
顔を包んだ。


「早く来い!」

「・・・い や・・・。」

ティアラは涙目で彼に抗議する。

「あ?」

「あなたも・・・お母さんをさらった盗賊と同じじゃない・・・。」


彼は何も言わなかった。


「どうして簡単に人を殺すの・・・?」

「お前にはわかんねえ事だよ。」

彼は冷たく言い放って、ティアラの手を引こうとした。

「触らないでよ人殺し!」


彼女は睨みつけた。

するとサミュエルは堪忍の緒が切れたのか、

「勝手にしろ!」

そう怒鳴って、仲間の元へと去って行ってしまった。


ティアラは一人小さな泉に取り残された。
2人の死体と共に・・・・。


(どうしよう、これから一人。どうやってお母さんを探せばいいの?

あいつの元に戻って、私が悪かったからって謝る?

・・・そんな事したくない。

あいつだって人殺し。

―――私は自分の力でお母さんを見つけてみせる・・・。

お母さんを助けて見せるんだから・・・。)


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