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あるお伽噺
【ファンタジー 官能小説】

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旅の始まり-4

それから彼らは再び馬にまたがり、洞窟を後にした。


(何処に連れて行かれるんだろう。

仲間に合流するって、サミュエルみたいな怖くて、

短気な男たちに会わなくちゃいけないの・・・?

お母さんを探しに連れて行ってなんて言ったけど、本当に私にできるの?

怖いよ・・・。

こんな時にラウルがいてくれたら・・・。)



ティアラはもう決して会えない彼の事を思い出す。

ラウルはティアラの初恋の男だ。
彼はティアラと同じ年で、同じ村に産まれた。
何処に行くのもいつも一緒だった。

しかし、突然の別れは彼らが8歳の頃。
ラウルの夢は、彼の父親と同じ一人前の狩人になることだったのに、
彼は父親の真似事をして、一人森の中へ入って行ってしまったっきり。


(あの時、私がもっときつく止めていたら、彼は森に行かなかったかもしれない。

あの時、私が誰か大人に告げ口していたら、彼は森には行けなかったのに・・・。)


後悔ばかりが彼女の心に残っている。
ラウルは森へ入って行く前、彼は約束した。


“そんなに心配するんだったら、お前のお守り貸してくれ。
俺は絶対大きな獲物を持って帰って来るって。そうしたら父さんも俺を認めてくれる!
立派な狩人の仲間入りだ!!”


自信に満ちたラウルの目に彼女は何も言えなくなってしまい、
彼に母親から譲り受けた見事な象牙彫りのお守りを、そっと渡した。

それは空想の動物、ペガサスを模したものでティアラはとても気に入っていた。
彼女の母親はそれを祖父から特別に贈られたもののようで、
ティアラは幼いながらもその値打ちは高いんだろうな、と思っていた。


しかしお守りと共に、ラウルはティアラの前に現れることは二度となかった。


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