投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『越えるモノ達〜始まり〜』
【その他 恋愛小説】

『越えるモノ達〜始まり〜』の最初へ 『越えるモノ達〜始まり〜』 0 『越えるモノ達〜始まり〜』 2 『越えるモノ達〜始まり〜』の最後へ

『越えるモノ達〜始まり〜』-1

 かつてこの大陸は四大神が治めていた。ファルスは光と生を、ダリスは闇と死をカルナスは法と秩序をフェリスは愛と希望を司り、この四大神の元で人々は幸福に暮らしていた。
 しかし、永遠に続くと思われたこの栄華もファルス、フェリスと続き、そしてダリスとカルナスが同時に姿を消した事により失われる。  残された人々は混乱し失意と絶望に打ち犇めいていたが、やがて自らの足で歩みだしていった。
〜〜カルナード伝記〜〜



「ふぁ〜あ」
強い陽射しから逃れる為、山道の脇にそびえ立つ大木にもたれ掛かり欠伸をしている青年は、手元にかなり大きめの刀を置き虚な表情をしている。その気の抜けた顔、身長も標準で、体格も優れているとは到底言えない外見を見ると、手元にある刀の持ち主とは…それより持ち上げる事さえ出来ないので?と思える。が、「おい、カイン!」
ゴツゴツしてると言う表現が似合う体格の良い男にカインと呼ばれた青年は、手元に置いていた刀を片手で軽々と持ち上げて立ち上がる。
「よう、頼蔵」
男の名を呼んだ直後、ゴツンと響かせながら頼蔵のゲンコツがカインの頭に落ちていた。
「『よう、頼蔵』じゃねーよ!お前はこんな所で何してるんだ?」
眉間に皺を寄せながら問い詰める頼蔵に
「ん〜、悪い。ちと眠くなってな」
と悪びれる様子もなく答えた。そんなカインの態度に拳を強く握りしめながらも怒りを抑えながらも
「もういい!綾乃も待っているんだ。いくぞ!」
そう言って今来た道を戻っていく。カインもそれについていく。しばらく歩くと本来の待ち合わせ場所であった茶店が見えてきた。表に用意された椅子に一人の長い黒髪の女性が座りながらお茶を飲んでいた。二人が近付くと
「やっときたのね。また寝てたの?」
視線は湯呑に向けたまま問い掛ける。
(まずいなあ、かなり怒ってる…?)
カインは少し焦った。というのも綾乃は滅多に怒らないのだが、一度火がつくと厄介な程に永くなるのだ。なんとか初期の今の段階で怒りを鎮めなければ…しかし良い考えが浮かばない… 仕方がないので素直に謝る事にした。綾乃の目の前で土下座をして
「寝てしまい、すいませんでした!」
あまりに捻りのない素直な謝罪に仕方ないと肩を竦め「もういいわ。」
と許してやる。その言葉を聞き、
「はぁ…」
と安堵の吐息をもらすカインに
「でも反省はしなさいよね!次は許さないから!」
と指差しながら言う彼女にカインは苦笑する。


「で、なんでわざわざ待ち合わせまでしてこんな町から外れた茶店で集まるんだ?」
カインが頼蔵に問い掛ける。彼らはエイドという組織に属していて大きめの町には必ず施設がある(一般には秘密なので表向きは宿屋等の不特定の人間が利用する所になっている)。それなのに何故こんな山道の茶店に集まるのか?まだ何も聞いていないカインにとっては当然の疑問だった。
「それについては私から説明するわ」
頼蔵は無言で頷き、それを見て綾乃はカインに話し始める
「まず、ここに集まったのは出来るだけ知ってる者は少ない方が良いからよ」
「どういう事だ?」
「今回はエイドとしての正式な仕事ではないの。最近組織内で囁かれてる噂は知ってる?」
綾乃に問われてカインは考える。組織に流れてる噂…それは宋周国の法術士と密に繋がっている者が居る事「でもそれ自体は別に構わないと思うんだが…」


『越えるモノ達〜始まり〜』の最初へ 『越えるモノ達〜始まり〜』 0 『越えるモノ達〜始まり〜』 2 『越えるモノ達〜始まり〜』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前