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ディーナの旦那さま
【ファンタジー 官能小説】

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嫁と言いたい旦那さま-4

「ありがとう。ディーナちゃんにお礼を言っておいて。それから、近いうちにお祝いでも贈るわ」

 ニッコリと微笑んで言うと、カミルは一仕事達成したとばかりに満足そうな顔で頷き、フードを被りなおしてさっさと帰っていった。
 残されたサンドラが、バスケットの布巾をそっとめくると、なんとも美味しそうな栗入りのケーキが姿を現す。

 ディーナは非常に料理上手だと、カミルが以前からたびたびノロケていたが、確かに見事なものだ。
 二年前までレシピの文字も読めなかったはずの彼女だが、農場で客人が来るたびに、料理番の手伝いもしていたので、素朴な家庭料理からもてなしの菓子や祝いのご馳走まで、全て実践で覚えたそうだ。

 適度な厚みに切られて並ぶケーキは、外側がいかにも食欲をそそるこげ茶色に焼けており、ふんわりした金色の生地の中には、これまた美味しそうな丸ごとの煮栗。

 迂闊な事を口走らなくて良かったと、サンドラがバスケットを大事に抱えると、玄関の扉が勢いよく開き、買い物籠を手にしたルカが転がり込むように飛び込んできた。
 雨上がりの道を急いできたせいで、濡れた上着や靴がかなり悲惨な状態に見舞われている。

「せっ、先生! 今、そこでカミルさんに会ったんですけど……っ」

 どうやらルカも、たっぷりと『俺の嫁』を聞かされたようだ。まだ驚きの残る表情で、カミルと玄関のすぐ前で会った時の会話を話し始める。

「あははっ! 私もここ数十年で、一番驚いたかも。ちょうどいいから、早めのお茶にしましょうか。ルカは着替えていらしゃい」

 サンドラは笑い転げ、バスケットの中のケーキを見せる。そして、心優しい助手を労うために、今日は自分でお茶を入れるべく台所に向った。茶葉をポットに挿れて湯を注ぎ、ケーキを更に並べる。
 お茶の支度をちょうど終えた頃、ルカが着替えて降りてきた。

――そしてこの日。

 サンドラとルカは、『カミルのお嫁さん』が焼いた極上ケーキを食べつつ、『ディーナの旦那さま』のノロケっぷりを語りあい、大いに楽しいお茶の時間を過ごしたのだった。

 終


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