嫁と言いたい旦那さま-1
いい響きだ、とカミルは思う。
何がかと言えば『嫁』という言葉である。
しかし実のところ、それを良いと思うようになったのは、一週間前から。
その言葉をつける相手を手に入れてからだった。
「あっ……ぁ……っ! そんなにしちゃ……いやぁ……っ! あ、はぁっ……」
切なげなディーナの訴えを無視して、カミルは蜜で濡れそぼった花弁を吸い上げた。ビクビク引き攣りる内腿を押さえ、膨らんだ花芽も舌でくすぐる。
知り尽くした弱い場所を、いたぶるように吸いあげ、舌で抉り、舐めしゃぶっていく。
「……も、……もう……駄目、です……旦那さまっ、ああぁっ……」
執拗な愛撫に、ディーナは緑の瞳から溢れる涙で、顔をぐちゃぐちゃにしてしまっている。
「そうか? 気持ち良さそうに見えるが」
意地悪く尋ねると、ディーナは息を呑み、羞恥に染まった顔を背けた。
それでも、幾度も達した身体は、吐息のかかる感触にすら感じてしまうらしく、ヒクヒクと震えて素直な返答をしていた。
愛くるしい反応に、カミルは忍び笑いを漏らす。
「まぁ、良い。俺も我慢の限界だ」
――ディーナに小間使いを辞めさせて嫁にしたといっても、傍目に大きな変化はなかった。
今までと同じように、ディーナはカミルを『旦那さま』と呼ぶし、カミルは『ディーナ』と名前で呼んでいる。日々の過ごし方も変わらない。
しかし、いつも心の奥底にはりついていた、ヒリヒリ痛むような焦りや不安が、随分と薄らいだ気がするのだ。
『私は……旦那さまの、お嫁さんになりたいです』と、ディーナが言ってくれたから。
人間の娘が愛する相手と望む関係に……カミルにそう見て欲しいと告げてくれたから、己がディーナの身体だけではなく、心も手に入れたと実感できた。
「―― ん、んぅ……」
悩ましい声を聞きながら、密壷に滾った雄を埋め込んでいく。
全て納めると、ギュッと手足を絡めてしがみつかれた。熱く蠕動する内襞も雄に絡みつき、眩暈がするほどの快楽を与えてくる。
甘い吐息を零しながら、睫毛を震わせている姿は、愛しくて愛しくて、抱き潰したくなるほどだ。
小間使いではなく、嫁。
他の誰でもなく、カミルの――俺の嫁――は、実にいい響きだと思う。
少々残念なのは、その言葉を口にするきっかけが、まだ一度しか訪れていないことだ。