投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

悪魔とオタクと冷静男
【コメディ その他小説】

悪魔とオタクと冷静男の最初へ 悪魔とオタクと冷静男 86 悪魔とオタクと冷静男 88 悪魔とオタクと冷静男の最後へ

部長と刺客と冷静男-12

「とにかく、一目で解ったということは、わざわざ顔写真まで用意していたのだろうね。まったくご苦労な話だよ」
 しかしいくら金が絡むとは言え学生がここまでするとは、やはり『こいつの周り』にはろくなやつがいないようだ。念のためもう一度言っておこう。『こいつの周り』には。ああ、決して僕の周りではない。
 さて、と。
「……で?」
「……で? とは?」
「その馬鹿どもの仲間がおとなしくここにいる理由は何だ」
 今の話を聞いただけでは暴れていた理由にはなっても、長谷部を目の前にしながらも静かにしている理由にはならない。一度失敗したなら、退いて新たな作戦を練って次の機会を狙うなりするのが普通だろう。
 ……ふと脳裏に『なかまになりたそうな目でこちらを見ている』という言葉が浮かんだ。いやいや、まさかな。
「いや、それがですね、一度は敗れた身ですが、長谷部さんから再戦の提案を頂きまして、その条件としてここに来いと。こちらとしては願ってもないことなので、承諾した次第です」
「む、私はそんなことを言ったのかな? 記憶に無いのだけれど」
「ええ!? そんなぁ! 待ってくださいよっ」
 あわてた男子が長谷部に懇願するような目ですがった。いきなり意見が食い違った、ように見えるが、実のところは男子の言うことが正しいのだろう。いや、だって長谷部だし。
「冗句だよ。場の雰囲気を和ませたかっただけだから気にしないでくれ」
 何とも微妙な表情で黙った男子だが、なぜか他人事に思えなかった。その肩に手を置き、
「……あれで素だ」
「うわぁ……。なんだか容易に不安になれる事実ですねっ」
 ふむ、これがまともな人間の反応か。新鮮だ。
「さて、――何の話をしていたんだっけね?」
「……あの、あれもマジですか?」
「おそらくな」
 簡潔に答えたら男子はやや引き気味になった。
「――ああ、そうそう。もう一度そこの君にチャンスを設けるということだったね。些事だからうっかり忘れていたよ」
 長谷部は男子と僕の冷めた視線も無視した。そして立ち上がり、
「では少年、戦(や)る前に少し君の名前を聞いてもいいかい?」
「あ、いや、忍ぶ者として名が割れるのは……」
「はは、面白いことを言うね。顔がばれているのに名だけ隠す意味などあるのかな。それに、名を知った後にこちらが負けても大人に密告したりはしないから安心したまえ」
 長谷部は今まで座っていたパイプ椅子を片手で器用に畳みつつ、いつもより真剣味五割増で言った。
「そ、そうですか? そうですね。だったら」
 対して男子はやや腰を落とし半身に構えて、
「所属は秘密ですが、自分は崎守・刀夜(さきもり・とうや)と申します」
「崎守、サキモリか。では栗花落くん、悪いが君は帰りたまえ。そして、たぶん大宅くんたちもまだ帰ってはいないだろうからね、解決したから安心してくれと伝えておいてくれ」
「……いきなりだな。理由は」
「明日にでも話そう」
 真剣。少なくとも巫山戯が消えるぐらいはマジなことらしい。
「……解った」
 ならば僕がいる理由も無い。お言葉に甘えて帰らせてもらおう。
 何やら雰囲気がいつもと違うのが気になるが、まあいい。お望みどおり僕は部室を出た。
 さて。つばさとオマケは本当にまだ帰っていないのだろうか。そう思いながら携帯を取り出して、使用頻度の一番高い番号を呼び出した。


悪魔とオタクと冷静男の最初へ 悪魔とオタクと冷静男 86 悪魔とオタクと冷静男 88 悪魔とオタクと冷静男の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前