投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ディーナの旦那さま
【ファンタジー 官能小説】

ディーナの旦那さまの最初へ ディーナの旦那さま 61 ディーナの旦那さま 63 ディーナの旦那さまの最後へ

ガラス玉とダイヤモンド-6


「や……っ」

 あまりのことに、ディーナは絶句する。
 情事の最中に、自分がどんな姿をしているのかなんて、今まで想像もできなかった。
 窓に映るのはせいぜい胸元までだったが、瞳を潤ませて快楽に火照ったいやらしい自分の顔は、とても直視できない。
 とっさに目を瞑って顔を逸らそうとしたが、カミルに顎をぐっと固定されてしまう。

「ちゃんと目を開けろ」

 冷酷に命じられて、ディーナが恐々と薄く目を開けると、カプリと耳朶を甘噛みされた。

「ン、あぁっ!」

 ねっとりと耳を嬲られて喘ぐと、窓ガラスの中でも、赤毛の少女が淫らに身悶える。

「お前は胸の大きさばかり気にして、解っていないな。普段は純情そうなお前が、抱かれる時はこんなに淫乱な顔を見せると知ったら、大抵の男は夢中になるぞ」

 耳の穴に吐息を吹きつけながら囁かれ、背筋を駆ける愉悦に、ビクビクとディーナは身を震わせた。

「そ、そん……な……っ!」

 震える声で抗議しようとした。カミル以外の男にこんな顔を見せるなんて、考えたくもない。

「わ、たし……ああっ!」

 しかし、充血した乳首をきゅっと摘まれて、訴える悲鳴は甘い喘ぎ声に変わってしまう。
 クニクニと擦られるたびに痺れるような愉悦が広がり、男を咥えている秘唇の隙間から、また蜜が溢れ出す。
 窓にはそこまで写っていないのに、余すところなく痴態を見せ付けられているような気になり、羞恥に消えてしまいたくなった。
 カミルが満足そうに目を細め、ディーナを両腕でしっかりと抱きしめる。そして乱れた赤毛の張り付く首筋に顔を埋め、低く呟いた。

「――愛している」

 小さな、しかしはっきりと告げられた言葉に、ディーナは頭の先からつま先まで貫かれた。

「……」

 声も出せずに、口をハクハクと戦慄かせていると、カミルが顔をあげた。
 暗い窓ガラスに映る整った顔は、とても皮肉そうな笑みを湛えていた。赤い瞳に宿る光の暗さに、ディーナはギクリと身を強ばらせる。

「吸血鬼のくせにと驚いたか? 他種族の中で長く暮らせば、寝所で女が喜ぶ言葉の一つも覚えるさ。……もっとも、俺にはどうも理解できん代物だがな」

 くくっと、カミルの喉が鳴った。

「だ、んな……さ、ま……?」

「お前になら、大勢の人間や他種族の男が、心からこの言葉を捧げたがるだろうに……可哀相にな」

 鏡のようなガラスの中で、カミルがくっと口角をあげる。

「ここにいる限り、お前は俺だけのものだ。契約だからな」

 言うなり、カミルはディーナの首筋にまた顔を埋めて強く吸い上げた。

「んんっ!」

 すでに幾つも花びらのような赤い痣が散っていた首筋に、また一つくっきりと痕が刻まれる。

「ディーナ。目を逸らさないでしっかり見ろ。お前を抱いているのが誰か」

 膝の裏を掴まれて、強く下から突き上げられた。

「や、あああっ!! だんな……さま……あぁ……っ!」

 全身を突き抜ける快楽に、ディーナは喉を逸らして悲鳴を放った。大きく見開いた瞳から、ボロボロと涙が零れ続ける。
 ここでカミルに仕えて抱かれ、一番近くにいる……ディーナの望みをそのまま口にされたはずなのに、張り裂けそうなほど胸が痛い。

「ひぅっ……あ、あぁ……やぁ……」

 耐え切れずに横を向くと、肩越しに不自由な姿勢で唇を奪われた。

「ほら、泣くな。今日は酷くして悪かった」

 優しく唇をついばみながら、カミルが囁く。

「これでも、俺はお前を気に入っているんだ。愛とやらは理解できないが、真似事くらいはしてやれるぞ」

 チュッと音を立てて、濡れた目尻に口付けられた。

「愛している、ディーナ……こんな言葉一つで、お前が少しばかり楽しめるなら、何度でも言ってやる」


ディーナの旦那さまの最初へ ディーナの旦那さま 61 ディーナの旦那さま 63 ディーナの旦那さまの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前