ガラス玉とダイヤモンド-5
(えっと……こう、かな……?)
たどたどしく舌を動かしてみると、頭上でカミルが短く息を呑んだのがわかった。
両手を髪の中に差し込まれ、頭を上下させられる。
「んっ……く……んくっ、ん……」
苦しいけれど嫌悪感は感じず、時おり労わるように優しく頭を撫でられると、えもいわれぬ嬉しさがこみ上げてくる。
熱心に口淫奉仕するディーナの、雄の根元に添えた手や、唇の端も零れた唾液でベトベトになっていた。
しだいに頭がぼうっとしてきて、どうしようもなく身体の芯が疼き、破れたネグリジェの纏わりつく腰が勝手に揺れる。
秘所から溢れた熱い蜜が、太腿に流れ落ちてシーツを濡らしていく。
何も見えないのは解っているけれど、ついカミルを求めて、強請るように視線を上へ向けてしまった。
しかし、暗闇になれた目でも、やはり視界に写るのは、せいぜいぼんやりした黒いシルエットだけ。
「っ……もういい」
掠れた声とともに、すっかりだるくなってしまった口から怒張が引き抜かれた。浅い呼吸を繰り返しているディーナを、カミルが荒々しく組み伏せる。
膝裏に手がかかり、唾液に濡れそぼった肉茎が、ジンジンと火照る秘所に押し当てられた。
「はっ……だん……はぁっ……さ、ま……あぁっ!」
先端がグチュリと埋め込まれた次の瞬間、一息に貫かれて語尾が跳ねあがった。
濡れてはいたものの、ろくに慣らしもしていなかった秘所に、疼きを満たされた愉悦と引き攣れたような疼痛が入り混じる。
「ディーナ……っ」
顎を掴まれて、顔を向けさせられる。互いの吐息がかかる距離まで唇が近づき、ゆっくりと押し付けられた。
表面を触れ合わせたまま、カミルが唇を動かし、言葉にならない泣き笑いのような声が、その隙間から零れ落ちていった。
――どのくらい経っただろう。
「は、はぁ……ひっ……あ、アン……あっ……」
真っ暗な寝室で、ディーナは後ろから獣のように貫かれていた。
すっかり力が入らなくなった腕は上体を支えられず、上体をシーツに押し付けて腰だけを高くかかげた淫らな姿勢で、半開きの唇からは切れ切れの嬌声を零し続ける。
あまり慣らさずに貫かれたものの、その後からいつも以上に執拗な愛撫を施され、数えきれぬほど絶頂に押し上げられた。
全身が過敏になりすぎるほど感じさせられ、もう許してと泣いて訴えても、魅了の魔法をかけられたいのかと脅すように言われてしまい、首を振って愛撫を受け入れるしかなかった。
いっそ、魔法で理性を失ったほうが楽になれるのかもしれないけれど、カミルがいっそう遠くなってしまいそうな気がして、怖くてたまらない。
それなら、苦しいほどでもカミル自身によって喘がされたかった。
「はっ、ぁ……ふ、あぁ……だん、な……さま……ぁ……」
必死に呼んでもカミルから返答はなく、媚肉を擦り上げる動きだけが激しくなる。
熱く脈打つ肉茎に、グリグリと膣壁をつきまわされるたび、結合部からはディーナの蜜と先ほど注がれた精が、泡だって滴り落ちていく。
尖った胸の先もシーツに擦れて、疼痛交じりの快楽を生み、いっそう追い詰められる。
「はぁ……はぁっ…………ン、あっ…………あ、あーーっ!」
弱い最奥をこね回されて、暗闇の中でまた火花が散った。
充血した内壁が、大きく痙攣を繰り返して肉茎をしめつけ、必死に立てている膝が、ガクガク震えて崩れ落ちそうになる。
涙と唾液で濡れた頬をシーツに押し付けて、快楽の残滓にヒクヒクと身を震わせていると、指先でそっと頬をなぞられた。そんな微かな刺激にさえもひどく感じてしまい、ディーナは溜め息のような恍惚の声を漏らす。
「ぁ……」
「随分と気持ち良さそうだな」
カミルが喉を鳴らして低く笑い、頬をなぞっていた指が、ポッテリと腫れた唇に移動した。涙で塩辛くなった指を口腔に押し込まれる。
ディーナはぼぅっとしたまま、大人しくそれを咥えた。痺れる舌を無意識に動かし、口腔をかき回す指を舐めしゃぶっていると、やや上擦った嘲笑が聞こえた。
「……自分がどれだけいやらしい顔をしているか、見せてやろうか?」
口から指が引き抜かれ、カチリという音と共に、ほのかな淡い黄色の灯りが室内を散らす。カミルが寝台の脇にあるランタンをつけたのだ。
「んっ」
突然の光に、ディーナは呻いて目を瞑った。
鉱石ビーズで光らせる寝室のランタンは、光量を調節できる仕組みだが、一番弱い灯りでも、ずっと暗闇に慣れていた目には眩しすぎる。
震える両手で目元を覆いかけると、不意に背後から抱きかかえられた。
そのまま後ろ向きにカミルの膝へ座らされ、繋がったままの雄に胎内をより深くえぐられる衝撃に、ディーナは悲鳴をあげた。
「あああっ」
「ほら、しっかり見ろ」
片手で後から顔を掴まれて、窓へと向けられる。窓には鎧戸の他に、厚手のカーテンまでもかけられており、カミルは腕を伸ばすと勢いよくカーテンをあけた。
ディーナがしょっちゅう磨いている窓ガラスは曇一つなくピカピカで、鏡のように室内を写していた。
――もちろん、そこにいるディーナ達の姿も。