投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ディーナの旦那さま
【ファンタジー 官能小説】

ディーナの旦那さまの最初へ ディーナの旦那さま 55 ディーナの旦那さま 57 ディーナの旦那さまの最後へ

名前の解らない関係-2


(どのみち、旦那さまがもし人間だったとしても、私じゃつり合いそうもないなぁ)

 無愛想だが、非常に整ったカミルの顔を思い浮かべながら、ディーナは自分の子どもっぽい顔や貧相な胸をペタペタ触り、つい溜め息をつく。

(さすがにこれじゃ、旦那さまとはちょっと……サンドラ先生くらいだったらともかく……)

 妖艶な肢体の美しい女医が頭の中に浮び、同時にツキンとまた胸が痛んだ。

(あ、あれ……?)

 思わぬ痛みに、ディーナはまたうろたえる。
 サンドラとカミルは、お茶の間によく見れば、恋人というより本当に気がねなしの友人という感じだった。単に、見た目の上質具合がつり合っていると思うだけなのに……。

(やっぱり……恋人とか、そういうのはよく解らないよ)

 頭が混乱してきて、柔らかな枕にポフンと顔を埋めた。どうやら自分の頭は、あまり上等でないみたいだと思う。
 料理や掃除なら得意だが、読み書き計算は必死に頑張ってようやく困らない程度だし、特に人間関係のことを考えようとすると、途端にディーナの頭は参ってしまう。

 大好きな両親が生きていた頃は、仲の良い幼なじみだっていた。
 その男の子が大好きだったし、『大きくなったらおよめさんになって』と、言われて、ちょっとくすぐったいような嬉しい気分になったのも覚えている。

 でも……農場に連れて行かれてからは、皆に嫌われるようになってしまった。
 ディーナのせいで皆のお給金が減ったのは一番の原因だろうが、他にも何かあったのかも知れない。
 もしくは、好かれるために何かが足りなかったのか……。

 何がいけないのか、散々考えても解らなかったから、いつのまにか考えないようになったし、考える暇もなくなった。
 そうしたら、こうして自由になった今になっても、そういうのを考える部分が、すっかり錆び付いてしまったらしい。

 この曖昧な関係の名前を、はっきり考えようとすると、頭の中が強張って、上手く考えられない。
 恋愛とか、恋人とか夫婦とか、素敵な言葉にとても憧れるけれど、それは自分が触ってはいけないような気がする。

(もし、旦那さまにとって私が……)

―― 恋人だったら、なんて大層な事は望まない。『お気に入りの小間使い』にしてもらえるなら、それでも十分だと思う。


ディーナの旦那さまの最初へ ディーナの旦那さま 55 ディーナの旦那さま 57 ディーナの旦那さまの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前