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調教学園物語
【調教 官能小説】

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〜 水曜日・窒息 〜-1

〜 水曜日 ・ 窒息 〜


 外傷はない。 痛みも、あの激しさは嘘のようにあっさり消えた。 
 それでも私は左手を庇(かば)い、右手だけで登校服に着替えて教室を後にした。 こういう時、いつでも私が先頭だ。 クラスメイトは私の動きにつられるように、ようよう後からついてくる。

 教室移動に与えられた時間は、たった10分の休み時間。 いつまでも茫然としているわけにはいかない。 下足棟で靴を履き替える。 赤味を帯びた西日を浴びつつ、C棟校舎を回ればすぐにF棟だ。 

 昨日の記憶が生々しい。 汚物を晒し、内臓を晒し、這いつくばって他人の肛門を啜る。 それ以上の、いや、それ以下の行為に唯々諾々と身を沈めたのは随分昔な気がするけれど、ほんの昨日のことだ。 あれから24時間しないうちに、またここに来させられるとは思わなかった。

「……」

 入口横の階段を降り、中講義室の前で登校服を脱ぐ。 時刻は15時20分。 7限開始を告げるチャイムの5分前だった。 衣服というよりは紐な布地をフックにかけ、

「失礼します!」

 全裸になった私は中講義室に足を踏み入れる。
 昨日と違って、部屋には例の腐臭はない。 違う点は他にもあり、空っぽだった昨日に対し、今日のプールには満々と透明な水がはってあった。 そしてプールサイドには、極端に短いブレザーとスカート――Bグループ生の制服――に身を包んだ少女が5名、黄色い腕章をつけて直立していたて、そのうち1人は寮で見たことがある先輩だ。 

 先輩方に背をむけ、昨日と同じ場所で体育座りをする。 そうして静かにしていると、1人、また1人と私の隣に生徒のみんなが腰を下ろしてゆく。

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 鞭、パドル、拳、縄。 そして電気、針と続いた激痛の一日。 何度も気が遠くなるくらい長く感じた一日の、最後を飾る7時間目。 フラフラになりながらもクラス全員が講義室に揃ったところでチャイムが鳴り、無機質な響きが鳴り終える間際、2号教官が現れた。 傍らに控える先輩方を指差すと、私たちに役職を紹介してくれた。 黄色い腕章をしている先輩たちは、生徒会の『保健委員』だった。 そのうち1人は私たちの寮にいる先輩――確かB33番先輩――だ。 寮とは打って変わって、物思いに沈んだような眼差しをしていた。

 続いて教官から指導内容の説明があった。 教官曰く、

「単純な痛み、つまり一過性の痛みは簡単に耐えられます。 所詮脳だけの問題ですから、気の持ち様がモノをいうんですね。 本当に辛い痛みは、身体的限界に直面した臓器が発する痛みにこそあります。 痛覚の上限を把握することで、理知的に痛みと向き合うことができるのです。 お前たちには痛みと向き合った上で、その限界を更に一歩超えてもらいましょう」
 
 とのこと。 この時点では何を言っているのか、私には皆目見当がつかなかった。
 十分すぎるほど過酷な今までの痛みより、更に辛い刺激などあるのだろうか? 特に爪の間に針を刺す激痛は、意識を限界まで霞ませる威力だ。 それを上回る痛みなど、俄かに信じがたい教官の言葉なのだが、学園には冗談など存在しない。 今回も例に漏れないことを、私達はすぐに思い知らされるのだろう。

「では、全員中にゆっくり入るように」

 教官に促され、私達はプールサイドから静かにプールへ足をつける。 冷水と思いきやプールの水は体温付近まで温められており、苦も無く浸かることができた。 プールの底に足をつけると、水面は私の肩まで届いた。 クラスメイトを見渡すと、とりわけ小柄な20番を含め、水面から強張った顔を浮かべて教官の顔色を伺っており、ピンと張りつめた空気が漂う。 

 過酷な刺激、プールの中。 辺りには私達を傷つけるべく設置された装置は、これといって見当たらない。 あるのはただのプール、キラリと光る水面下、底まで透き通ったぬるま湯のみ。 
 と、ここでハッとなる。 私たちが直面するであろう痛みとは、もしや……。

 私たちの怖れを知ってか知らずか、2号教官は水に浸かった私たちを一瞥して小さく頷いた。



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