見抜かれて-1
ドアをノックすると、「どうぞ〜」と声がした。
高校生になって4日目の今日は、健康診断だった。
身長、体重、座高を測って次の部屋へ進む。
どうやら内科検診らしく、服を脱がなくてはいけないようだった。
聴診器を当てられるため、邪魔になるブラジャーも外すことになる。
自分の衣服を用意されたかごに詰めて、胸を片方の腕で隠しながら、医者の前に用意された椅子にまたがった。
「ごめんね、手をどけて胸をこちらに向けてね。」
黒髪でショートヘアーの内科医がこちらを見ている。
指示通りに手をどけると、冷たい聴診器が私の胸の中心に振れてビクっとする。
聴診器が思いのほか冷たくて驚いた。聴診器を動かしている時に、内科医の指が乳首に謝って当たったりして、思わず乳首が勃起してしまった。
「ん〜…」
内科医は中性的で綺麗な顔立ちをしていて、髪を伸ばせば美人な女性と分かるのだが、ショートヘアーの黒髪のため、一見男性に聴診器を当てられているような感覚に陥る。
「あなた…高校生なのにすごく胸が大きいのね。Gカップくらいかしら？」
「えっ…」
内科医の目付きはいやらしいはずなのに、女性に見られてると思うと、いつもと違う感覚だった。
「この大きな胸、とっても素敵だけど音を聞くには少し邪魔ね。」
内科医はふふっと笑う。
「すいませんね、大きな胸で。」
別に怒ってなんてなかったが、胸のせいにされると、内心「私のせいじゃない」と反論してしまった。
その内科医はわざとらしく、綺麗な指先で私の乳首に触れたと思うと、そのまま胸全体を上に押し上げるようにして、下から聴診器を当てた。
内科医の中指は意識的なのか、無意識なのかは分からなかったが、私の乳首を強く押すようにしてくるのと、強い力で胸を腕で上に押し上げられているその感覚で、少し気持ちいいだなんて思っていた自分の胸の感度が怖かった。
これが、キモいエロジジイみたいなやつだったら、絶対一言言ってやるのに、この人は綺麗なお姉さんだし、私も調子が狂っていたらしい。
「うーん、なんか心拍数高くない？ドキドキして緊張してるの？」
内科医は、薄い唇で口角をあげて私に意味深長な笑みを浮かべている。
もしかして、私がちょっとエッチな気分になりつつあるのがバレているのだろうか。
この内科医が私の胸を強引に押し上げたりするせいだし、自分はそんな淫乱な子じゃありません、という意味を込めて、
「別に緊張してなんていませんよ。」
とか言ってしまった。
「そっか。私の思い違いだね。」
そういうと内科医は私の頭を撫でてきた。
「後ろ向いて背中見せてくれる？」
私は指示通り、後ろを向いた。
なんか頭撫でられるし、この人顔綺麗だし、ちょっと変なことされたいかな、なんて一瞬思ったりしたけど、馬鹿馬鹿しいと思って雑念を払った。
診察は終わって、ブラをつけて制服のボタンを一番上まで占めていると、
「君さ、高校生でこんなに胸大きかったら、肩凝るでしょ。」
と内科医が肩を撫でてくる。
「そうですね。重たいし、結構凝っちゃって。」
確かに最近、肩が石のように硬くなっていたな、なんてことを思い出す。
「私もさ、結構大きいから分かるんだ。」
内科医はほら、大きいでしょ？と言わんばかりに少し屈んだ。
顔ばかり見ていたので気付かなかったが、確かにシャツの隙間から綺麗な谷間が覗いていた。
「君、放課後時間があったらここにきなよ。どうも肩が凝ってるせいで姿勢が悪くなってみたいだし、私がほぐしてあげるよ。姿勢もよくなるから、どうかな？」
私の同級生で私より胸の大きい人なんて見たことなかった私は、誰にもこの肩凝りのことについて話すこともできなかったし、話したら、自分の胸の大きさを自慢してるみたいに勘違いする人も多かったから、そういうのがウザくて、平気なフリをしていた。
だから、この内科医みたいに胸の大きい人同士の悩みや苦悩を分かち合える感覚は新鮮で、すごくいい人だななんて思った。
考えておきます、とその場は返事を濁した私はだったが、この肩凝りから解放されたいと思う一心で、授業が終わってすぐに保健室へ直行した。