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青い涙
【女性向け 官能小説】

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青い涙-5

 わたしはハルくんに自分のことを話した。
 母親のこと、学校のこと、ずっとひとりで寂しかったこと、寂しさを紛らわせるために──好きでもないひとと関係を持ったこと、今初めてそれを後悔していること……。

 ハルくんは何も言わずにわたしの隣に座って話を聞いてくれた。
 話し終わったわたしの頭をぽんと撫でると、話してくれてありがとうと言った。

「まゆりちゃんは汚れてなんかいないよ」

 わたしは無言で首を横に振った。
 胸が苦しい。

「過去のことは、俺が塗り替えるよ。上書きしていく」
「ハルくんが汚れちゃうよ……」
「馬鹿だな。何言ってんだよ。そんなわけないだろ? まゆりちゃんは汚れてなんかいないんだから」
「ハルくん……」
「今の高校が嫌になったら俺と同じ高校に転入なり編入なりしてきたらいいんじゃないかな。ちょうど夏休みに入ったところだし、再スタートすることを考えてみてもいいと思う。生活も変えよう。俺、毎日電話するよ。いろんなところに遊びにも行こう」

 また涙が溢れ出る。ハルくんの顔が滲んでよく見えない。
 瞬きをするたびに大粒の涙が零れ落ちた。

「俺がいるから。ね? まゆりちゃんは寂しくて誰かに頼りたくて……自分を傷付けてしまっていたんだね。もう大丈夫だよ、俺がそばにいるから」

 ハルくんがわたしの頬に手をあてて、親指で涙をぬぐった。
 あたたかい手。

「もうその先輩とは会っちゃだめだよ。俺以外の男の人とふたりっきりで会うのは禁止ね。まゆりちゃんは俺の彼女なんだから」

 冗談ぽく笑って言ったハルくんの顔がよく見えない。
 こくりとうなずくと、また涙が落ちた。

「まゆりちゃん」

 ハルくんがわたしの頬を両手で包んで、優しくキスをした。

「何もしないって言ったのに、ちゅーしちゃった」

 ハルくんが笑って言った。
 わたしも笑った。また、涙が落ちた。

「でもこれでちゅーは上書きできたね。その先輩のこと、早く忘れさせたいな」
「たぶん、すぐ忘れちゃうよ」
「そうかな?」
「うん。きっとわたしの頭の中はハルくんでいっぱいになるから」
「よかった。嬉しいな。なんか照れるけど」
「ねえ、ハルくん」
「うん?」

 わたしはハルくんの背中に腕を伸ばして、ぎゅっとしてと小さな声で言った。
 ハルくんがわたしをすっぽりと包んで抱きしめる。
 男のひとに抱きしめられて、こんなに落ち着いた気持ちになったことなんて今まで一度もなかった。
 まるで氷がとけていくように、サクサクとしていた心がほぐれていく。

「ハルくん」
「うん?」
「触って」
「え?」
「わたしに触れて。もっとたくさん、もっと直にわたしに触れて」

 わたしは戸惑うハルくんの手を自分の首筋にあてた。

「ドキドキしてるから、ここ、首のところもわかるでしょ?」
「うん。ここでも脈をはかるもんね」
「ハルくんが触れてると、きっとずっとたくさんドキドキする。他のひとにはドキドキしなかった。ハルくんだけ」
「俺もドキドキするよ」


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