投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

actress
【その他 官能小説】

actressの最初へ actress 42 actress 44 actressの最後へ

二人は未完成-4

ツトムくんが童貞であるのを打ち明けられなかったのは、田所さんとほぼ同じ理由だそうで。


友達がみんな経験があったから、童貞であることをカミングアウトする勇気を出すことができず、ついつい経験がある振りをしていたそうだ。


見た目も爽やかなイケメンが、経験ないことが意外だったが、中・高校と部活一筋だったこと、元来人見知りが激しくて、女の子と話すチャンスがなかなかなかったことから、恋愛に縁遠い生活を送っていたんだそうだ。


「じゃあ、なかなかあたしに手を出してこなかったのは……」


「童貞ってバレるのが怖くて、踏み出せなかったんだ……」


顔を赤らめて俯く彼の言葉は、本心だろう。


好きな人の前ではカッコ悪い所を見せたくない。


特にツトムくん位の若い男なら、童貞=ダサい、女慣れしてる=イケてる、みたいな風潮は根強い。


だから、彼女である田所さんの前では自分を作っていたのだろう。


彼もまた、田所さんに嫌われたくなくて。


田所さんがこじらせ処女なら、ツトムくんはこじらせ童貞ってことか。


「あたし達、最初から素直に自分のことを話してれば何も問題なかったんだね」


「うん。オレ達、変に経験がないことをに気にしすぎだったんだな」


やがて二人は、どちらからともなくクスクス笑い出した。


うん、やっぱり二人はお似合いじゃないか。


「田所様」


「御代田さん……」


ツトムくんの身体からスッと離れた彼女は、やっと穏やかな笑顔をこちらに向けた。


「今回の依頼は、キャンセルでよろしいですね?」


「…………」


「本来なら、お客様の依頼は決して外部に漏らすことはないのですが、田所様の場合については例外の対応をさせていただきました。田所様のことを考え、最良の手段をとらせて頂いたとはいえ、お客様の秘密を土居ツトム様に話してしまったのは、弊社の過失になります。大変申し訳ありませんでした」


彼女に向かって、深々と頭を下げる。


そう、傳田を使い、恋人のツトムくんにこの撮影を知らせることは、明らかなルール違反であり、ちゃんと守秘義務についても契約書に表記している。


俺の会社だから、俺がルールなのだが、田所さんからここを突っ込まれたら、まず間違いなく負ける。


示談になったら、いくらかな。


ぼんやり頭の中で自分の貯金の額を計算しながら、彼女の言葉を待った。







actressの最初へ actress 42 actress 44 actressの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前