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二人は未完成-2

「田所様が、弊社にご依頼なさった理由、ご説明させて頂いてもよろしいでしょうか」


本題に入ろうとすると、怒りがこみ上げてきたのか田所さんを睨み付けたツトムくんだったけど、すかさず傳田が咳払いをすると、慌てて視線を逸らす。


そんな微妙な空気の中で、俺は最初から説明をし始めた。


田所さんが実は処女であり、コンプレックスをずっと抱えていたこと。


ツトムくんが「処女は重いから嫌だ」と言っていたことがずっと引っ掛かっていて、処女だとバレて嫌われる前に、ロストバージンを決めたこと。


弊社は田所さんが処女を捨てたいだけの手段に過ぎず、心はツトムくんにあると言うこと。


話し始めた最初の内は、ツトムくんもしぶしぶといった感じで、あまり聞きたくないようだったけれど、徐々に力が入っていた眉間が緩んでいった。


「千鶴……お前、そんなに悩んでいたのか」


「ご、ごめんなさい……! あたし、男の子と付き合うのが初めてだから、少しでも嫌われたくなくて……」


「…………」


「でも、あたしがしようとしてたことって、裏切り以外の何者でもなかったんだよね……。処女であることに焦り過ぎて、暴走して、取り返しのつかないことをしてしまいました。……ごめ……なさい」


泣きながら崩れ落ちそうになる田所さんを、傳田がしっかり支え、優しく肩を抱いてやる。


俺やツトムくんに取った態度とは真逆そのものだ。


一方、ツトムくんは握り締めた拳を震わせたまま、黙って俯いていた。


「……もう、いいよ」


しばらくの沈黙の後、ポツリとツトムくんが呟くと、俺達は一斉に顔を上げて彼を見る。


そこには、どことなくきまりの悪い顔で視線を泳がすツトムくんがいた。



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