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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-85

「でも、エッチなんだけど、なんとなく、いやらしくないというか……」
「それは、みのはん。安納郷市は、濃密なエロにストーリーを充実させるという手法で、一躍有名になった先生やからね」
「その人のことは、よくわかんないけど……。でも、恋愛小説でも、ベッドシーンはあるわけだし……あれの、激しいものって考えればいいのかなあ」
「ああ、そうや。いい感じ方やね」
「えへへ」
 ほめられた美野里は上機嫌だ。この単純さは、今の状況のある種の異常さを、普通のものとして捉えている。
「さて、今日はこれぐらいにしておこうか」
「え? まだ早いですよ」
「まあ、活動日ではなかったしな。それに……」
「はい?」
「あ、いや。少し、用事を思い出してな」
 なんとなく、頬が上気している智子。だが、皆はそれを見逃している。
「そうですか〜」
 珍しく歯切れの悪いその様子にも、美野里は気がつかないでいた。
「それじゃあ、轟君。活動日は毎週火・木・金の3日だ。ただし、金曜日は自由参加の日だから、何か用事があればそれを優先しても構わないから」
「はいな」
「ま、よろしく頼むよ」
 そして、波乱含みの文芸部臨時活動は終わった。



 智子は部室の鍵を預けに、兵太は転校後の細々した書類を取りに職員室へ向かったので、ふたみと美野里だけが帰路についていた。
「じゃあね、ふたみ」
 そして、玄関で方向が違う美野里とわかれたふたみは、すぐに帰るのではなく、踵を返して女子トイレに向かった。
理由はただひとつ。湧き出ていた性欲を、処理するためだ。
 和式のトイレに、下着を脱いでしゃがみこみ、濡れた自分の性器に、指でむしゃぶりついた。待ちかねていたように、指の愛撫を受けた花は、瞬く間に蜜を生み出す。
「あ、あう……」
 股間をまさぐる指の動きは、精錬されたものだ。自分の性感帯を、ミリ単位も違えることなく責める指使い。それは、何度となく繰り返してきた行為だからこそ、できることだ。
「く……う、うく………」
 ひたすらに、自分の性器をいたぶる。抑揚をつけた動きで。溢れる粘液を、指先に絡め取り、陰唇になぶりつけ、快楽に耽るふたみ。
「ふ……あふ……あく………」
 ここは校舎のトイレだ。大きな声を出せばひょっとしたら外にも聞こえてしまうかもしれない。
指をくわえ、喘ぎの漏出を抑えながら、ふたみはひたすらに自慰を愉しんでいた。
「あ……ん……んく………」
 陰部を弄ぶ指を伝い、蜜がぴちゃぴちゃと和式トイレの水溜りに糸を引いて零れていく。
「ふ……く……う……ん……」
 これまでとは明らかに違うビジョンが、ふたみの中で繰り返されている。それは、あの日…痴漢に遭いしかも粗相までしてしまった屈辱的な日の晩にした自慰の中で描いたもの。
とある影の、存在。
「はあ、はあ………あ、あはぅ………」
 その影に、ありとあらゆる身体の感じる部分を嬲られる自分を思い浮かべ、自分の指で苛めているのだ。そして、それは、今までの自慰行為で得てきた快楽とは、まったく別の心地よさをふたみに与えた。
「あ、あ―――――!!」
 そして、そのとある影に、胎内に挿入されたビジョンが浮かんだ瞬間、ふたみは達した。
ぴしゅっ、と潮を吹いた直後、弛緩した股間から黄色い液体が溢れ出る。それを予測していたから、すぐに指を離したふたみは、手を小水で汚さずに済んだ。それは、慣れのさせる技である。
「は、はあ……あふ………」
放出感に酔いながら、さざなみのようにひいては寄せる快楽に身を寄せる。それらの全てが治まりを見せたとき、なぜか、これまでには味わったことのない寂しさを、ふたみは感じた。
絶頂を迎える瞬間、影の形が、確かな人物をかたどっていたからだ。
そして、それは、間違いなく、轟兵太のものだった――――。


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