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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-64

「(ごくり)」
 ひとみの咽喉がなる。どうやら、濃密なシーンに辿り着いたらしい。
「はぁ……」
 時おり、ため息をついて。
「ふう……ふう……」
 少しずつ、息が荒くなってきて。
「………」
 ひとみは、物語にのめり込んでいた。
かたや、勇太郎も、そんな彼女の艶かしい仕草に釘付けだ。
「―――」
 目を閉じて、大きく息を吐くひとみ。そして、少し乱れた原稿用紙を、わさわさと整えた。………読み終わったらしい。
「終わった?」
 勇太郎は、口の渇きを覚えながら、手を差し出して原稿用紙を受け取ろうとした。しかし、ひとみは、胸に原稿用紙を抱える格好のまま、勇太郎を見つめている。
「ひ、ひとみ?」
 上気した頬と、官能に潤む眼差し。それは明らかに、劣情を催した証だった。


(今日は、そのつもりは、なかったけど……)
 『めぐりあい』を読破したあと、ひとみの身体には、情欲のうねりが残された。熱い。身体の火照りが、とても熱い。
 して欲しい。目の前の、恋人に、淫らな行為をたっぷりと。
(昨日も……)
 気が遠くなるまで、愛しあったというのに。………まだ足りないのだろうか。
これでは、いつぞや、暴走した時(*第3話参照)の自分と変わらない。
(だって、初めてなのに、いきなりバックで、途中で縛り入って……)
 『めぐりあい』で繰り広げられためくるめく快楽の世界は、とても、初めて同士のセックスを描いたものとは思えないほどに扇情的だった。
普段は心優しい少年が、覚えた快楽に突き動かされ、初めて貫いた少女を後ろから犯し尽くす。少女もまた、そんな少年にひたすら興奮し、自ら身体を拘束して喜悦の声をあげる。
途中までの純愛が、霞んでしまうような性描写。さすがは“安納郷市”。
(しかも、おしりで……)
 快楽を貪りあった恋人同士は、沸きあがる興奮を抑えきれないまま、禁断のつながりを求めあう。そして、生殖を超えた結合を果たし、最後はそのまま、共に頂へ駆け上る。
(………)
 ひとみにとって後ろは、完全に未開の地だ。小学校の時の検査行為や、トイレの時にどうしても触れることはあるが、性行為を目的としてその場所を虐めたことはない。
 一方通行のはずの、不浄の孔。勇太郎の淫棒で、その閨を犯されたら、どんなことになるだろう? 湧き上がる興味は、果てがない。
 今まで読んできた“安納郷市”で、スカトロジーに関する話を読んだことはある。と、いうか、後ろの孔に関する話はほとんどの本に出てくる。恥辱を謳うなら、後ろの孔への虐待行為は、絶大にして絶対な部分だから。
ただ、こんなにも関心をもったのはこれが初めてだった。ひょっとしたら、自分たちと似た背景の物語なだけに、一層の感情移入をしてしまったのかもしれない。
(嫌われるよね……おしりでおねだりしたら……)
 その不安はある。淫乱に求めすぎて、逆に彼を不安にさせてしまった前例もある、ひとみとしては、慎重にならざるをえない。
 とはいえ、燃え上がった官能は、確かな意思を持って存在している。お尻じゃなくてもいいから、勇太郎に、触ってもらいたいという情念が渦を巻いている。それだけは、どうしても、抑え切れない。
 原稿用紙の束は机に置き、身体を勇太郎へ預けた。


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