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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-61

「ワシと弥生さんとはな、従姉弟なんじゃ」
「!?」
“堂”という字を書く安堂……おそらく、無関係でないとは感じていたが、まさかこうまで近い連なりだったとは。つまり、勇太郎とひとみは、かなり近しい系譜にある者どうしということになる。
「勇ちゃんにとって、ひとみとふたみは……どう呼んだらいいのかしらね?」
 郷吉に聞く弥生。その言葉づかいは、肉親へのそれに変わっている。
「ハトコ……ではないのう、それより下になるのかな?」
「……そうね」
 場が、和んだものになった。勇太郎とひとみも、ようやく合点を得て、思いがけない関係に驚きながらも、昔話をする二人を微笑ましく見ていた。
 郷吉と弥生は、父親が兄弟だという。だから、安堂の姓が残ったのだ。そして、弥生は郷吉よりも5歳年上だとも知った。そういえば、何だか郷吉は終始、弥生に主導権を握られている気がする。
 家も、隣家同士だったそうだ。今住んでいるあの家のことだ。昔は、もう少し広い敷地があって、ほとんど同じ土地の中で隣りあっていたのだという。
残されていた土地の権利が、隣り合う同じ“堂”の字の、今の安堂両家という偶然を生んでいたのだ。むしろこうなると、全ては、必然の出来事だといえるかもしれないが。
 仲睦まじく語り合う郷吉と弥生。その姿は、本当の姉弟のようでもある。
 ついつい、と勇太郎の袖が引かれた。ひとみだ。
(ね、二人だけにしてあげない?)
 目がそう言っていた。面会時間の終了は、6時。あと、2時間はある。それでも、水入らずの時間を過ごすには、きっと短いものだろう。
「じいさん」
 勇太郎は、続けた。ひとみの望みは、自分の望みでもあったから。
「僕、ひとみと少し出てくるよ」
「なんじゃ、でぇとか? ホテルは、この近くにはないぞ」
「だぁ! このじじぃ!」
 弥生さんの前で言うことか―――といいかけて、くつくつと笑っている彼女を見た。この人の理解度の深さというものは、計り知れないものがある。
「ゆっくりしてくるがええ。……勇太郎」
 郷吉の許しを得た勇太郎とひとみが、並んでドアに向かおうとしたとき、
「ありがとう」
と、声が重なった。優しい孫たちの気遣いが、郷吉と弥生には嬉しかったのだ。





「きてよかった」
 城南大付属病院は敷地がひろい。なにぜ、付属の機関も含めて、建物は五棟もあるのだ。そして、患者やその家族・友人たちの憩いの場として、中庭がある。
 その中庭に来るなり、ひとみが嬉しそうに言った。
「おばあちゃん、嬉しそうだった」
「そっか……」
 よかった、と勇太郎も思う。しかしそれだけに、抑えていたある悲しみが胸をよぎる。
 勇太郎の、微妙な表情のかげりを、ひとみは見逃さない。
「どうしたの?」
 ひとみに嘘はつけない。今日わかったことだが、わずかなりとも、血の繋がっている恋人だ。こうなると、運命の存在を信じずにはいられない。
 だからだろうか、勇太郎はなんの躊躇いもなく、ある事実を話すことが出来た。
「ひとみ、最終病棟って知ってる?」
 まずは、それを訊く。ひとみは首を振った。
「最終病棟ってのは、その、例えば末期ガンの患者さんとかが入るところでさ。……つまり、残された時間を、安らかに過ごせるように用意されているものなんだ」
 勇太郎が、話を続ける。
「この病院の第三棟は………その、最終病棟」
 それが、意味するものは、ただひとつ。
 安堂郷吉は、もう長くはない――――。


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