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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-5

「あやまることなんて、ないよ」
「え……」
「勇太郎くんは、何も悪くない」
「………」
「恥ずかしいけど……それだけだから」
 顔を紅くして、ひとみが恥じらう。勇太郎は、その仕草に心を打たれた。
 準備していたはずの言葉は全てが真っ白になり、代わりに勇太郎の口から出た言葉……。
「好きなんです!」
「!?」
 勇太郎は、言ってから自分の愚を呪った。明らかに、告白をするタイミングではないし、明らかに、その結果も見えている。愚行の上に恥を重ねてどうするか、と己を公衆の面前でなじってやりたい。
「僕は、ひとみさんが好きなんですよ!」
 しかし、口は止まってくれない。まるで、意思を持たない器官になってしまったようだ。いや、勇太郎の意思を反映しなくなったというべきか。
「僕は、だから……!」
「勇太郎くん」
「は、はい!?」
 収拾がつかない。それでも、口を開こうとする勇太郎を止めたのは、やはりひとみだった。
「私も、好き」
 ひとみの両手が、勇太郎の頬に移動した。熱い手のひらが、勇太郎の顔を包む。
勇太郎には、ひとみの声は届いていなかった。ただ彼の意識の中にあるのは、ひとみの真っ赤になった頬と、潤んだ瞳。そして、薄く開かれた唇のみ。
「あ………」
「すき」
 何かを言おうとした勇太郎の口は、ひとみによって塞がれた。
 完全に勇太郎の意思は、吹き飛んだ。
「………」
 感じるのは、熱く、柔らかい少女の唇。そして、熱い息づかい。
 ひとみに、キスをされていると勇太郎が理解したのは、その唇が離れてからだ。
「ひ、と、み……さん?」
「………」
 ひとみは、これ以上ないくらいに顔を紅潮させてもじとする。自分がやった行為を、今更ながら恥入っているのだ。
「はぁ〜」
 勇太郎は大きく息をついた。そこには、取りあえず平静をわずかに取り戻した安堂勇太郎がいる。彼の思考の中で、ひとみからのキスという行為によって、彼女には嫌われていないという一事が、余裕を生んだのだ。
「ひとみさん」
「はい?」
「………お茶、もらっていいですか?」



 ずずという音は、わざと出した。滑稽だが、気持ちを落ち着かせるためだ。 
 縁側の陽だまりに佇む老夫婦のごとく、穏やかな時間が二人の間にはある。
 勇太郎は、ティーカップを置いた。既に、ひとみのカップは空になっている。
「え〜と、ひとみさん」
「なに?」
「ごめんなさい」
 まずは、ひと謝り。
「女の人の部屋の秘密を、勝手に持ち出して勝手にのぞいたことは、男として許されない行為だと思います」
「でも…」
 ずい、と勇太郎は手を差し出してひとみの言葉を遮った。
「信じてもらいたいのは、これが故意でなかった事です」
「………」
「あと、あれは本心です」
「あれ?」
「好きです」
 瞬間、ひとみは吹いた。
「わ、笑うのですか!?」
「ご、ごめんね。だって……」
 口調は少し強くなってしまったが、勇太郎は心が軽くなっていた。侮蔑の言葉を散々投げかけられるよりは、笑われるほうが、はるかに気持ちいい。
「私も、好きよ」
 ひとみは、両手で頬杖をつきながら答えてくれる。それは照れ隠しの行為だったのだろう。赤い頬は、見るからに熱を帯びたままだ。


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