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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-36

第4話 夏風邪に御用心

「明後日まで、よろしくね」
 そう言ってひとみは、所属する<護身術同好会>の合宿に向かった。合宿というと聞えはいいが、なんのことはない、部員同士の夏旅行である。
「ごめんねえ、勇ちゃん」
 そう言って弥生は、町内老人会の主催する温泉小旅行へ出かけていった。年に3回ほどあるその旅行は、弥生も楽しみにしている行事だ。
 そうなると、留守番をするふたみは、ひとりぼっちで2日を過ごさないといけない。さすがにそれは可哀相なので、勇太郎に留守番の白羽の矢が立ったのだ。
 二人が同時に外泊で家を空けることに色々渋っていたふたみだったが、勇太郎が泊りがけで留守番に来てくれると聞き、その機嫌を直した。
「じゃ、行ってくるから」
 ひとみを駅まで、
「じゃ、行ってくるでの」
 弥生をバス停まで送ってから、勇太郎とふたみは、昼食の買出しに出かけ、家へ戻った。



 勇太郎と一緒にいられるのが嬉しいのか、ふたみはご機嫌だった。
 今日のお昼は、ふたみ特性のレバニラ炒め。意外なことに、おっとりしてそうなふたみだが、料理では、俊敏さを必要とする炒め物を得意としていた。
「うまい!」
 夏は、スタミナが一番だ。勇太郎は、スパイスの利いたレバニラ炒めを、とにかくかきこむ。
「お兄ちゃん、なんだかバテてたみたいだから……」
 さすがは、ふたみだ。この、さりげない細やかな心遣いがとても良い。
言葉は悪いが、文字通りひとみとやり過ぎて、この夏は多少バテ気味だったのだ。最近は、ひとみのほうもペースを考えてくれるようになったので、体力的に余裕は出てきたが。
「これからどうしよう?」
 昼食を済ませ、午後の時間と相成った。
「どっかいく?」
 勇太郎はふたみに聞いてみる。
「外は暑いから……」
 ふたみは、家にいたそうだ。そうなると、やれそうなことがひとつ。
「……宿題でも、しようか」
 もう夏休みも半ばを過ぎている。本腰を入れて課題に取り組まないと、後で痛い目をみるだろう。しかし、この頃勉強ばかりしている気がしてしょうがない。
「そうだね」
 それでもふたみは、穏やかな笑顔で頷いてくれた。



 ひとみのおかげで、勇太郎にとっては天敵とも言える理数系科目の課題はヤマ場を越えていた。しかし、あまりにそこに重点を置いた結果、文系科目の課題がおろそかになってしまっている。
(古典も、できなかったしなあ)
 あの時(*第3話参照)は、ひとみがとんでもないことになって、勉強どころではなくなった。それ以来、勇太郎は、なんとなく古典のテキストを開けない。
 と、いうわけで勇太郎の目の前には、文系科目のテキストが並んでいるのだ。
(ふたみちゃんは……英語か)
 時に辞書をめくりながら、ふたみはかりかりとシャーペンを走らせる。なかなか快調のようだ。
 勇太郎は、文系の科目は並以上の成績である。特に、文章理解を得意としていて、設問の大意をすぐに汲み取り解答を並べていく。もっとも、文章が読めることが大前提だが。
(うっ、なんだこの意味……)
 わからない英単語ばかりが揃うと、お手上げである。古典でもそうだったが、文法が苦手な勇太郎であった。
「ご、ごめん、ふたみちゃん。辞書、借りていい?」
 にもかかわらず、不覚にも彼は辞書を忘れていた。
「うん、いいよ」
 それに対して、さ、と辞書を笑顔で勇太郎に渡すふたみ。ひとみだったら、“家まで取りにいけばいいじゃない。近いんだから”とか言って取り合ってくれないだろう。
(いいコだなあ……)
 そんな子に、<お兄ちゃん>と呼ばれている今の自分を、とても幸せだと思う。


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