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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-177

“人の縁を、強く感じなさい”―――今にして思えば、遺言にも似た祖父の言葉をもっとも実践できる道を彼は選んだのだ。そしてそのためには、今一度、城南の地を離れる必要があった。やはり、見聞を広めてゆくには、情報が大量に交差している都市圏で生活することが望ましいと考えたからだ。
祖父の残してくれた財産はなかなか大きいものだったが、勇太郎はそれに甘えることなく、できうるかぎりは自分の力で勉学と生活をしていった。もともとひとり暮らしのようなものだったから、生活全般に関しては取り立てて問題はなかったが。
 一方、ひとみは地元近くの城南大学へ進学した。医学部ばかりが目立つ大学ではあるが、れっきとした総合大学なのだ。ひとみはその大学の法学部に進んだ。将来は、弁護士か行政書士になるつもり、と本人は言っていたが。城南大学には、その道に関する高名な教授がおり、それで彼女は、地理的に近場でもある城南大を選んだのである。
結果、勇太郎とは少しばかり距離が離れてしまった。だが、そんなものを感じさせない絆の強さが二人にはあり、危機らしい危機もなく、交際は続いた。
 そして、勇太郎が無事に教師としての資格を得、都市圏の私立高校へ赴任が決まったとき、すぐに二人は結婚した。
間もなく、二人の間に双子の女の子が産まれた。勇太郎には、ひとみも含めて新しい家族が一気に三人も増えたのである。
『じいさんの、執念を感じた』
 娘、しかも、双子。勇太郎は、祖父・郷吉が生前言い続けてきた、“二人の娘を見るまでは死ねん”という言葉を思い起こさずに入られなかった。
 しばらくの都市圏での生活の後、思うところがあり勇太郎は地元の城南町へ戻ることにした。母校・城南学園への勤務も決まって、久方ぶりとなる懐かしき安堂宅へ、今度は四人で帰ってきたのである。





 その引越しがようやくひと段落した次の日、勇太郎とひとみは隣家に赴いて、弥生と歓談していた。
「弥生さん、いつもありがとう」
「あら、やだね。そろそろいい加減に、“おばあちゃん”と、呼んでおくれよ」
「……その、照れます」
「ふふふ。勇ちゃんは、もう、私の大事な孫なんだから。遠慮しないでおくれ」
主のいなくなった家は、鍵を預けておいた弥生がいつも綺麗にしてくれていた。彼女にとっては、郷吉の形見でもある場所だ。折を見ては、この家を掃除して、思い出を振り返っていたのだろう。
「おばあちゃん♪」
「おばあちゃん♪」
麻奈と美奈が、この穏やかで暖かい弥生の膝に取り付いている。一目見るなり、この双子姉妹は、弥生のことを好きになっていた。
「おお、おお……麻奈ちゃんも、美奈ちゃんも、相変わらず可愛いねぇ」
七十歳を越えても、まだまだ元気である。曾孫二人を膝に抱いて、無邪気に微笑むその顔は、なんと生気に満ちて若々しいことだろう。
「郷ちゃんも、きっと大喜びしてるだろうねぇ」
なにしろ、彼が望んで止まなかった勇太郎とひとみの娘なのだから。それも、一度に二人も。
「ごうちゃん?」
「ごうちゃん?」
その麻奈と美奈が、曾祖母の口から出た言葉に反応した。この時期の子供は、大人たちの話す言葉にとにかく敏感である。
「麻奈ちゃんと美奈ちゃんの、ひいおじいちゃんだよ」
弥生が、そんな曾孫たちに優しく教える。
「ひいおじいちゃん」
「ひいおじいちゃん」
「そう。麻奈ちゃんと美奈ちゃんの、お父さんのおじいちゃん」
「おとうさんのおじいちゃん」
「おとうさんのおじいちゃん」
「それが、郷ちゃん」
「ごうちゃん♪」
「ごうちゃん♪」
言葉の響きが気に入ったのか、何度も繰り返して弥生の身体にしがみつく二人。自分と郷吉の連なりが、もう一度深く繋がった結晶でもあるこの曾孫たちを、弥生はそっと抱きしめた。


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