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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-176

「………」
 その惨状を予測できるだけに、勇太郎はひとみの背中を見送りながら、なんとも申し訳なく気の毒な気分になっていた。途中で抜かれたそれは、しっかりと布団の中にも名残りを振りまいており、こちらもひどい状態ではあるが。
「………おとうさん」
「!!」
 襖の奥から、再び幼い声が響いた。瞬間、勇太郎はまだ後拭いもしていない一物をトランクスにしまいこみズボンを引き上げる。そのまま布団の中から顔を出し、隙間の開いている襖の方を伺った。
すぐに、先程と同じ年頃の女の子が顔を出した。
「み、美奈、どうした?」
勇太郎が、娘の名を呼ぶ。至極自然な表情を作って。……布団の下では、汚した部分になんとか触れまいと悪戦苦闘していたのだが。
「……うんち」
「わ、わかった。ちょっと、待つんだぞ」
すぐに布団を跳ね除けて身を起こすと、半分寝ぼけている愛娘・美奈の背中を押すように、手洗いへと向かった。
(ま、まいったな……)
先端から溢れるものがトランクスに滲んで、どうしても腰を引いた歩き方になってしまう。
「あ、あれ? 美奈も、おトイレ?」
「お、おう……」
美奈の背中を押すうちにどうやら早足になってしまったらしく、勇太郎は一足さきにその場所を目指していたひとみと麻奈に追いついた。
「あ、おかあさん、おはよー……」
「あ、おとうさん、おはよー……」
「まなちゃんも、おはよー……」
「みなちゃんも、おはよー……」
今日という日もまだ終わらない深夜の廊下で出会った二人の娘は、ぺこりと頭を下げあっていた。同じような顔に、同じような寝ぼけ眼を貼り付けて、同じような仕草で。パジャマの色が赤と青に分かれていなければ、どっちがどっちだか判別も出来ないくらいに似ている姉妹。
なぜなら、勇太郎とひとみの娘である麻奈と美奈は、双子だからだ。
「あ……」
ふいに、麻奈の身体がぶるりと震えた。
「あ……」
 ふいに、美奈の身体もぶるりと震えた。
勇太郎とひとみは、歩みを止めてしまった娘たちを見やる。もう、状況は掴んでいるのだけれど。
「しっこ、出ちゃった……」
 双子のうち、姉の麻奈。見れば、足元に丸い水溜りが出来ている。
「うんち、出ちゃった……」
 双子のうち、妹の美奈。見れば、お尻の部分が盛り上がっている。
「あらら……」
双子の母、ひとみ。こちらは、初めから股間に染みを作っている。
「あたた……」
双子の父、勇太郎。こちらも、初めから股間に染みを作っている。
「行き先、変更ね……」
「御意……」
結局、それぞれがそれぞれに下半身を汚してしまったので、そのまま家族全員で風呂場に直行し、湯船の中でみんな仲良く日をまたぐことになったのであった。





時の流れは、早い。
郷吉が逝ってから十年の歳月が過ぎていた。
初めは寂しさに満ちていた故人の記憶は、いつか楽しい話題の中でも笑顔と共に出てくるようになり、それが会話に彩りと懐かしさを与えるようになっていた。それほどに、時間の持っている力というものは、残酷ではあるが尊くもある。
勇太郎はその後、卒業と同時に都市圏の大学へ進学した。それは、彼の強い意思の中で決めたことである。
郷吉の死後、勇太郎には志す道が生まれていた。教師になることだ。


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