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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-140

「気分はどうだ?」
「ん……すこし……落ち着いた」
「………」
 弥生の顔は、全てを知っている様子である。
「いるのね……」
 お腹を両手で優しく抱え、穏やかな顔で弥生は言う。
「ここに、郷ちゃんの赤ちゃんが……」
「っ」
 安堂家を出奔してから2ヶ月過ぎ。弥生が誰かと性的接触をもったことがないというのなら、彼女が宿した生命の父親は、間違いなく甥の郷吉だ。
 そして、それははっきりと娘の口から判明した。
「弥生」
「産みます、わたし。でも、郷ちゃんには知らせないでください」
「そういうわけには……」
「いいんです」
 弥生の顔には、父の言葉さえ受け付けない決意が滲み出ていた。それは、母になるものだけが持つ強靭さの表れだったのだろうか…。
 日を改めて、郷市は杉本の薦めに従い、大学附属病院の産科医・根室のもとへ弥生を伴って訪ねた。根室はすぐに弥生を診察室へ案内し、正式な検査を施した後、二人に告げた。
「できとるな」
「………」
 なんと、簡単に言うのだろう。
「あのスギの恩人ならば、わしも喜んで協力しよう。どうする? わしに任せてくれるか?」
「ああ……頼みます」
 もとより、郷市には杉本を除けばほかに頼る医者はいない。
 ついでに言えば、懐具合も心もとない。そのことを、暗に郷市が尋ねてみると……。
「ああ、心配ないぞ。お前さんらには、わしの“別荘”に来てもらうからな」
「え?」
「これが住所じゃ」
 根室がメモ用紙にさらさらと筆を走らせて、郷市と弥生にそれを手渡した。みると、その住所は随分と郊外にある気がする。
「痛みも、苦しみも……まあ、全部をなくせるとはいえんが、また子供を産みたくなるほど楽に産ませてやるワイ。ちょっと、協力はしてもらうがの」
「………」
「子は宝。母も宝じゃ」
 とりあえず、その言葉で二人は根室を信じることにした。………』





「あら、勇太郎、もうダウンなの?」
 『ループスラッシャー』なるアトラクションから出てくるなり、勇太郎は近くのベンチに崩れ落ちた。
「僕は……こういうの、ヤバイの……」
 名の通り、螺旋状のレールを高速で走るそれは、スピードと回転というダブルインパクトで観客の絶叫を誘うものだった。
 上空から一気に滑り落ちる『スカイプレッシャー』、逆に、上空に一気に持ち上げられる『ライジングバンジー』……などなど、勇太郎ペアはひとみのリードによって、いわゆる“絶叫系”アトラクションをメインに廻っている。
 ある程度ならば勇太郎とて大丈夫だ。しかし、回転にはまいった。身体中の血液が螺旋を巻いて、なんだか世界が廻って見える。
「じゃ、しばらく休憩しよっか?」
「そうだね……」
 ひとみも勇太郎の隣に座る。そして、いささか青い顔で息をつく勇太郎の顔を覗き込む。
「ダメそう?」
「しばらくは、ちょっと……」
「………」
 ひとみは、周囲をぐるりと見回してみる。さすがに平日の遊園地。少ないとはいえないが、人はまばらである。


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