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紡ぐ雨
【SM 官能小説】

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志津絵-6

丈太郎はぼんやりと壁にもたれかかったままだった。
窓の外はすっかり暗くなっていた。部屋は暗く、寒かった。
「椙田さん、お夕飯ですよ」
階段の下から志津絵の声がした。
「椙田さん?」
丈太郎は緩慢な動きで襖を開け、顔だけ出した。
「すみません、ちょっと具合が悪いので夕飯はけっこうです」
そう断ると、布団を敷いて寝転んだ。
あんな光景を見た後で、あの夫婦と共に食事などできるわけがない。
「椙田さん。入りますよ」
志津絵が襖を開けて入って来た。
「疲れが出たのかしら」
電気をつけると心配そうに枕元に座った。
「お熱は?」
「あ、ありません。寝てれば大丈夫ですから」
「まぁ、服のままで。着替えないと」
押入れから寝巻きを出し、丈太郎の体を起こした。志津絵から、風呂上りの甘い匂いがした。あの模様を洗い流したのだろう。
「大丈夫です、自分でできますから」
そっと志津絵を押しやった。
「あとで様子を見に来ますから」
志津絵は電気を消すと静かに出て行った。


丈太郎はそのまま本当に眠ってしまった。
夜中に目を覚ますと、部屋がじんわりと暖かい。目を凝らして見ると
火鉢に炭が入れてあり、部屋が乾燥しないようにとやかんがかけてあった。志津絵に違いない。
そんな気配にすら気づかず眠っていたのだ。
体がだるい。
額に手を当てると、本当に熱が出ていた。寒さなら、東京より田舎の方がよほど厳しいと言うのに。もうすぐ入学式だと言うのに、体調を崩している場合ではなかった。
水が飲みたい。
しかし。またあんな場面に出くわしたら、ますます具合が悪くなりそうだ。丈太郎は仕方なく、やかんの湯を湯呑みに注ぎ冷めるまで待ってから飲み干した。
「参ったな……」
再び布団に横になり、目をつぶった。昨夜は寝不足だったせいか、再び眠りに落ちるまでさして時間はかからなかった。


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