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a village
【二次創作 その他小説】

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J-2

 雛子が、熱々の白飯と格闘中の頃、吉岡は、小走りで雛子の家を目指していた。

(昨日は、呆れただろうなあ……)

 ご馳走を振る舞われた上に、風呂まで頂くという、下にも置かぬ扱いを受けただけで無く、替えの着物迄拝借してしまった。
 我ながらと思い返す毎に、恥ずかしさが込み上げ、そのせいか、昨夜は、熟睡するに至らなかった。
 それに、借りた服が小さ過ぎて、何とも格好がおかしい。こんな様を、村人に目撃されるのは御免蒙りたい。
 そんな理由で吉岡は、未だ、村人も出歩かぬ早い時刻に、高坂の家を出て来たのだ。

「河野さん……お、お早うございます」

 ちょうど、雛子がおにぎりを作り終えた頃、吉岡が姿を現した。
 出迎える雛子は、少し驚いている。

「お、お早うございます……どうしたんです?こんなに早く息を切らせて」
「はぁはぁ……昨晩は、すっかりお世話になりまして」

 吉岡は、そう言うと、半ば自嘲気味に深くお辞儀をした。
 その様子を目の当たりにした途端、雛子の顔が紅く染まった。

「ちょ、ちょっと!止めて下さい」

 此方が依頼したのだから、もてなすのは当然だ──。そう思っていたのに、わざわざ吉岡が返礼に訪れるとは、思いもしなかった。

「と、とにかく……喜んで頂いてほっとしましたわ」
「美味しいご馳走を頂いた上に、風呂まで頂いて、おかげ様でほらっ!」

 吉岡は、快活な声と共に袖口を捲り上げ、力こぶを作って見せた。

「こんなに力が漲ってます!」
「まあ!」

 雛子は笑ってしまう。真面目そうな吉岡が見せた仕種が、何とも滑稽に思えたからだ。
 そんな彼女の笑い声に、吉岡も釣られて笑顔になる。

「じゃあ、これ持って行って下さい!」

 手渡されたのは小さな風呂敷包み。吉岡の掌に、温かさが伝わる。

「これって……」
「お弁当です。いらっしゃると思ってたので、服と一緒に置いて行こうと思ってたんです。
 でも良かった。ちょうどいらしたから手渡せましたわ」

 屈託のない笑顔が弾ける。目の前で見る、表情の向こうに吉岡は、彼女の兄、光太郎の面影を見た。

「あ、ありがとうございます!助かります」
「だから、そんなに頭を下げないで下さいって!」

 やっぱり兄妹だな──。吉岡は心の中で、そう呟いた。
 そして、必ず成功させてやろうと心に誓った。






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