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a village
【二次創作 その他小説】

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J-17

「首尾好く行きましたねえ!林田さん」

 喜色満面の吉岡。とても嬉しそうだ。

「吉岡君の演技が、玄人跣(はだし)だったからだよ」
「と、とんでもない!林田さんの土下座こそ、真に迫ってましたよ」

 つまり、二人は“最初から最後迄”演じていたと言う訳だ。

「──其れにしても、こんな所で大学の先輩に出逢うとは。何とも奇遇ですよね」
「その件は、何分、内密にしてくれよ」
「勿論ですとも!」

 同じ、大学出身者同士では屡々(しばしば)、身内意識が芽生えるのは珍しい事では無い。彼等も同様の意識で、嘘を演じた模様だ。

 唯、嘘と言う物は、綻び易い物でも有るのだが……。





「こ、こりゃあ、たまげた!大した別嬪さんじゃあっ」

 雛子を見た高坂は、開口一番に感嘆の声を挙げた。
 綺麗に結い纏めた髪。薄く施された化粧と、紅を引いた口許の艶やかさ。
 真っ白なブラウスに、目の覚める様に鮮やかな群青のスカート。その容姿は、普段見る野良着姿の雛子からは、想像出来ない程、華麗であった。

「そんなに、ジロジロ見ないで下さい。恥ずかしくなります」
「こりゃあ、すまんの。何時もの野良着を見慣れとるせいか、別人みたいじゃあ」

 気恥ずかしさが先に立つ雛子で有るが、嫌な気はしない。
 現に、迎えに来た吉岡は勿論の事、家の中に通されて、家人である高坂の嫁や子供逹への挨拶の時も、一様に褒められた事は、女性として嬉しかった。

「こりゃあ、見違えましたよ!」

 そして勿論、林田も同様に思っていた。

「あ、ど……どうも」

 思わず、顔を引き攣らせる雛子。駄目だと思いつつも、顔が言う事を利かない。
 一方の林田は気にして無い様子だが、何時に無く表情が固いようだ。

 皆が揃った所で、高坂が、徐(おもむろ)に立ち上がった。

「それでは、今夜は吉岡さんの労いと、それに……」
「えっ?」

(それにって、吉岡さんの他にも、労う人が居るの?)

 雛子の不安を他所に、高坂の言葉は続く。

「──だいぶ遅れましたが、河野先生と林田先生の、歓迎会を執り行います」
「わ、私達もですか!?」
「田植えとか盆とか、こういう集まる時やないと、なかなか呑む機会が無いんですわ。こないな田舎やと」

 こうして、慰労会と歓迎会を合同に行うと言う、一風変わった宴会は始まった。
 大皿に盛られた幾つもの料理や徳利が、家人によって運ばれて来る。恐縮する雛子は、何か手伝おうとするが、

「今日は、ああたはお客さんやから」

 と、窘(たしな)められて席に戻される始末。諦めて、出された家庭料理を堪能する事にした。


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