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おはよう!
【純愛 恋愛小説】

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おはよう!-6


「は?11年前に居た男の子?」

そう和音に聞き返したのは、鼓笛隊のスネア担当にして同級生の萩原航汰。
航汰の隣で首を傾げているのは同じくスネア担当で3つ年上の、みんなの頼れる先輩である、瀬戸内晶斗。
古株の隊員である、現在金管を指導している優羽や忘れられない彼女を除いて、和音が知っている同期の人間だ。
この二人とは入隊時期が同じで、昔からなにかあると男女の差を越えて相談しあってきた仲だ。
しかし、最近は和音の卒業話が持ち上がったおかげであまり会話をしなくなってはいたが。
そのため二人に話しかけることは久しぶりで、帰り際の今、練習場の片付けと掃除が終わったタイミングで一緒に掃除をしていた二人に話しかけた。航汰と晶斗の二人は喜んだが、その内容に怪訝な反応しか返せなかった。

「なんだ、それ」
「だから、聞いてるままなんだけど。」
「相変わらず唐突だな、和音ちゃんは・・。」

航汰が呆れている横で、苦笑を浮かべる晶斗。
その二人の反応が分かっていた和音は、今度は自分が見た写真のことも踏まえて説明し直す。
11年前の合宿での写真。その写真に写っていた自分をじっと見つめる、覚えのない男の子。小柄で、黒髪。金管で覚えがないことから、スネア担当だったと思われること。
そこまで説明をしても、二人は首を傾げるばかり。
なぜなら。

「ていうか、11年前とか、確か隊員がいっぱい居た時期じゃねぇ?」
「ああ・・。しかも大半が既に卒業、というか辞めたから・・人が入れ替わってるしな」
「・・・だよね」

二人の言葉に、和音はため息をついて肩を落とす。
自分も所属していたのだ。二人が言った、鼓笛隊の内部を覚えていないわけがない。
あくまで、再確認しただけ。
もちろん例の男の子を覚えていないことだけでも知れたのが収穫といえば収穫だが、何も問題の解決にはなっていなかった。
どうしても自分を見つめていた男の子が気にかかる和音が、どうしたものかと頭を悩ませていると、航汰にズイッと顔を近づけられる。

「ていうか、和音。」
「・・・なに。」
「お前、卒業するんじゃなかったのかよ。」
「・・・・」
「しかも何でホルンを教えてるんだよ、よりにもよって奏多なんかによ!」
「それは・・」

むすっとした顔で核心をつく航汰に、何も言えなくなる和音。
自分でも、付き合いが長くない奏多に何故ホルンを教えているのか。何故、辞めると言った自分でないとならないのか。
そして・・辞めたかったはずなのに、どうして流されているのか。

顔が強張った和音を見て、晶斗が無理やり航汰を和音から引き離す。
止められたことに、納得できない航汰が暴れた。

「そのくらいにしておけよ、航汰」
「何言ってんだよ晶斗!だって!」
「航汰」
「・・!」

晶斗に注意をされ、はっとして和音の顔を見て黙り込んだ。
長年一緒にいる二人だからこそ、天才であるが故に周りと距離を取り続ける和音の表情に敏感なのだ。

「・・まぁ、奏多は悪いやつじゃないことは俺たちが保証しておくよ」
「・・・ていうか、何で私が卒業しようとしてたこと、二人が知ってるの?」

話を変える意味で、和音はボソリと呟く。事実、自分が卒業しようとしていたことは優羽と奏多にしか教えていない。奏多との約束のおかげで先送りされたが。
他の隊員はおろか、同期であった彼らにも教えていなかった。
だからこそ、和音の疑問は至極当たり前に感じられるものだった。
二人に問いかけると、和音の手にあったホウキが航汰の手によって奪われた。
そして、その奪われたホウキを目で追っていると頭を小突かれた。
顔を上げると、苦笑いを浮かべた二人の顔。

「俺たちが分からないわけないだろ。」

頭を小突いた航汰が、自信満々な表情に変えて言う。
和音が何も言えなくなっていると、晶斗が航汰に視線を向けながら笑う。

「とかなんとかカッコつけてるけど、優羽さんから聞き出しただけだからね」
「え」
「っおい!なんでそれ言っちゃうんだよ!!」
「航汰がやたらと得意気に言うから真実を言ったまでだろ?」
「言わなくていい真実だろ!」

先ほどまでとは打って変わって、ぎゃいぎゃいと口喧嘩を始める二人を見て、和音は「またか・・」と呆れつつその場を離れた。
昔から見てきた光景で、どこか落ち着く反面喧しいのでさっさと離れる。

「・・・なんで二人に話しかけたんだっけ・・」

何かを真剣に気にかけていたはずだが、二人の口喧嘩を見たらバカバカしくなって忘れてしまった。

「・・・奏多待たせてるし、帰るか・・」

掃除と片付けを始める前に、倉庫の片付けに行かされた奏多と帰る約束をしたのを思い出し、荷物を持って練習場を出た。
昔の写真の中で、自分を見つめていた男の子がいた事をすっかり忘れて。





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