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堕落
【大人 恋愛小説】

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第一章 歪み-1

「やめてっ。お兄ちゃん……。なんで、こんなこと……淳兄には彼女さんがいるじゃない……」

私は今日も年子の兄、淳兄に犯されている。

それでも、私は淳兄を嫌いにならなかった。


パパとママが2年前、不慮の事故で亡くなってから、有名国立大学に通うため一人立ちしていた兄が私の住むマンションに突如移り住んできた。

「久しぶりだな。杏。」

黒いスーツを身に纏った兄。
首筋からただよう、ギルティの香り。
そして逞しげな腕に描かれた薔薇の刺青、磨かれたデイトナ。
上京する前とは遥かにかけ離れた兄の姿に私は驚きを隠せなかったのだった。
上京前はノーブランドが当たり前で、派手なところが全くなく、極度の小心者で優柔不断な性格なはずだった。優しさは兼ね揃えているもののどこか人との付き合いが下手で、その上、女の子が大の苦手。
妹の私ですら、接するのに苦労しているようにもみえた。
当然あの頃は彼女もいなくて、いつも部屋に隠りきっていた記憶がある。
私自身も比較的美形の兄を女友達に見せたかった思いもあったが、兄に悪いと思い、あまりそういった影響は控えるようにしていた。
私はあの頃の兄が秘かに好きだった。
飾り気もなく、白か黒かの地味で素朴な兄が。
正直、いつか私に振り向いてくれると思っていた。
いつも無表情なくせにたまに少し微笑んでみせたり、細いのに力持ちだったり、ご飯をよく食べるそんな兄が……私は『あの頃の兄』が大好きだったのだ。
それなのに。
なぜ、あんなに変わってしまったんだろう。
私があの時素直に気持ちを伝えていれば、お兄ちゃんはあの頃のままでいられたのだろうか。
私がぐずぐずしていたから。

いや……。
そもそも私が『あの頃のお兄ちゃん』を好きになってしまったから。
私だけ、時が止まってしまっているから。
おかしいのは私のほうなんだ。

私は気づけば今の『お兄ちゃん』の身体を貪るようになっていた。
「嫌よやめて」と美味しくもない嘘を吐きながら。

せめて私が綺麗なら、もっと美しい形でお兄ちゃんと繋がれたのかもしれない。
今の派手なお兄ちゃんに地味な私は似合わない。
お兄ちゃんが私の病的すぎるくらい白い首筋に長く美しい爪を立てる。
これは『痛み』なんかじゃない、私と淳兄にしかわからない『快楽』


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