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虹色の楽譜
【女性向け 官能小説】

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その声を合図にスタジオ内が1時間後の録音に合わせて動き出した。
それからはあっという間の1時間で
私は一息も出来ないままに本番の時間になった。

「華やかにお願いします」

奏くんが中央のグランドピアノにゆっくりと座る。
いつも見慣れたように
ゆっくりと両手の中指にフッと息を吹きかけた。
おまじないみたいに。

まるで、幻のようだった。
いつものように、激しい練習曲でもなく
私に聴かせてくれる楽しい曲でもなく
静かなレストランのバックミュージックでもなく。

奏くんの紡ぎ出すクラシック調のピアノ曲が私を包み込んだ。

「綺麗」

音を綺麗と表現する事が、正しいのか分からないけど。
そう表現する事が何よりもしっくりする演奏だった。

「凄い。奏くん」

「村松さん」
「あ。柳下さん。このまま成功すると良いですね」
「小野寺、奏だよね。村松さんと知り合いだったなんて驚いたよ」

「奏くんを、ご存じなんですか?」

「ああ・・・・」
そう言ったまま、柳下さんはお茶を一口飲んだ。

「昔、知ってた。
小野寺がコンクールに出て来た時、すごいと思ったよ」

「・・・・って。柳下さんピアノをやってたんですか?」
意外だ。



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