2 鉱石ビーズ三百個-3
(こ、これ……気持ち、いいの……?)
身体中の疼きに苛まれながら、ディーナは戸惑う。
あまりにも性急に身を焦がす熱は苦しいほどなのに、時おりその苦しい疼きの合間から、甘い感覚が顔を覗かせる。
不意にカミルが手を伸ばし、つ……と首筋を指でなぞられた。
たったそれだけなのに、信じられないほど凄まじい愉悦に、爪先から頭の天辺までを貫かれる。
『ん、ああああっ!!!』
ディーナは目を見開いて叫び、弓なりに大きく身体を反らした。
全身が浮き上がるような感覚に襲われ、手足がヒクヒクと勝手に痙攣をくりかえす。
脚の合間から熱い蜜がどっと噴き出て、下着から床まで垂れていくのを感じた。
『は、はぁっ……っひ、ぅ……ご、ごめんな、さい……』
粗相をしてしまったのかと青ざめ、喉を引きつらせて涙を流すディーナを、薄笑いを浮かべたカミルが見下ろす。
『イクのは初めてか?』
『ひ、はぁっ……はぁ……イ、ク……?』
『こうして気持ちよくなることだ』
覆いかぶさるようにして両肩を押さえ込まれ、耳朶をねっとり舐められると、また瞬時に強烈な愉悦が弾けた。
『やああああっ!!』
カミルの身体の下で、ディーナは満足に動けないままビクビクと身を引きつらせる。
『もっとも今は、魔法で性感を増幅させている状態だかな。これくらいで根をあげていたら、吸われる時には気が狂うぞ』
くっく……とカミルは楽しそうに喉を鳴らし、不意にディーナを小麦袋のように肩へかつぎあげた。
『ひゃ、ぁんっ!? な……っ!?』
『ずっと床に転がっていたいのか? こっちは数十年ぶりに、試験管に入れたヤツじゃない新鮮な生き血を飲むんだ。少しくらい楽しませろ』
そう言うと彼はディーナを寝室までつれていき、寝台へ落とした。
少々手荒な扱いだったが、柔らかい敷布の上なのでそう痛くもなかった。
それよりも各段に溢れ出している体液が、太腿までベットリ濡らしているほうが気になって仕方ない。
『あ、だ、だめ……』
快楽に痺れる手足をバタつかせ、必死で寝台から這い降りようともがく。
そんなディーナをカミルはあっさりと捕え、両手首を一まとめにして頭上へと縫い付けた。
『いまさら逃げる気か? せいぜい後悔しろと言ったはずだ』
もう片手で尖った胸の先端を弾かれ、強烈すぎる愉悦に悲鳴がほとばしった。
『ひ、ああ! ち、違いま……す……あ、ああっ! 逃げる……じゃなくて……わたし……旦那さまの、シーツ……汚しちゃう、から……やああっ!!』
『なんだ、それは?』
カミルが呆れきったような顔でディーナを睨んだ。
『安心しろ。すぐにそんな心配をする暇もなくなる』
冷酷な声に、ゾクリと背筋が震えた。
(そっか……私、このまま殺されるんだ……)
好きに扱って良いとの条件でディーナを買い、自身を安売りしたと軽蔑の眼差しを向けた男の言葉を、ディーナはそう受け取った。
そして、妙に可笑しくなった。
後悔しろと言われても、こんな人生に未練など欠片もない。
抵抗を止めて身体の力を抜くと、両手首の拘束が外された。カミルの薄い唇の合間から、赤い舌がチロリと覗く。
胸の突起を舐められると、心臓を握りこまれるような感覚がして、お腹の奥がキュンと切なく疼く。
尖って赤く色づいたそこを吸い上げられるたびに、鋭い快楽に突き刺され、目の前にチカチカと火花が散る。
身悶えて喘ぎ続けるうちに、手早く衣服を剥ぎ取られ、生まれたままの姿にされてしまう。
ジクジクと熱を帯びた秘所まで晒されて、グチュリと指を埋め込まれた。
『ひ、ああ!』
生まれて始めてそこに異物を挿入されたのに、痛みも嫌悪も感じない。与えられるのは鮮烈な快楽だけで、膣壁で指を締め付けながら、ディーナはまたもや簡単に登りつめる。
ニ本、三本と指を増やされ、かき回された蜜壷からジュプジュプと卑猥な音が上る。シーツはにじむ汗と絶え間なく零れる蜜で、とっくにグショ濡れとなっていた。
ディーナの喉からは嬌声がほとばしり続け、何度果てたかも解らなくなった頃。
すでに朦朧としていたディーナの首筋を、カミルの舌がヌルリと這った。
『ああぁんっ!』
背筋を震わせて甘ったるい悲鳴をあげると、首筋に息を吹きかけながらカミルが低く笑う。
『これだけ効いていれば、もう痛みも感じないだろう』
『はぁ、はぁ……っ?』
霞のかかった視界に、白く輝く二本の細い牙がチラリと見え、次の瞬間それが、ディーナの首筋に突き立てられた。
『―――――――!!!!!』
声も出ないほどの衝撃に、全身が戦慄いた。
カミルは牙を引くと、破れた血管から溢れる鮮血をすすり、ゴクリと喉を鳴らして嚥下する。
痛みは微塵もなく、それどころか絶頂の何倍も強い恍惚に、頭の中が痺れて真っ白になる。
ほんの数十秒が、永遠にも感じた。