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ディーナの旦那さま
【ファンタジー 官能小説】

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1 吸血鬼に仕える娘-3


 吸血鬼は一般的に『傲慢・身勝手・恥知らず』と、三拍子が揃った、最悪な性格の種族として認識されている。
 中にはカミルのように、多少違う者もいるかもしれないが、人間にも他の魔物種族からも非常に嫌われているのは確かだ。
 九尾猫《ナインテール・キャット》や人狼に鳥人《ハーピー》、半人半蛇《ラミア》といったように、泉から産まれる魔物のほぼ全てが、人と獣の混ざったような姿になる反面、吸血鬼だけは獣の要素が混じっていない。しかもその容姿は、非常に整っている者ばかりだ。

 そのうえ吸血鬼は唯一、魔法を使える種族だった。
 人間や他の魔物も、魔法文字を彫って鉱石ビーズを作ったり、使ったりすることは出来るが、自身の力だけで魔法を使えるのは吸血鬼のみ。

 だから吸血鬼は、自分達こそが最も優れた種族であると、人間も他の魔物も全て見下す。

 そんな態度でいれば、いかに優れた部分があろうと、他種族から疎まれるのは当然であるし、血液を欲して人間を襲うために、殆どの全ての国で討伐対象ともなっているのだ。

 彼らも普段は人間と変わらぬ食事を取り、生き血を必要とするのはせいぜい年に一度。それも人が死ぬほどの量ではなく、せいぜい軽い貧血を起こす程度だ。

 ただ、襲われて吸血された人間にとってみれば、死ななかったから良いと言う問題ではない。何よりも吸血鬼は、獲物の生き血を飲む際に発情し、その被害者を犯してしまうのだ。
 それに吸血鬼は徒党を組んで行動することが多い。
 一人の吸血鬼に吸われるならまだしも、集団で襲われたら、それこそ失血死することもある。

 そんな危険な吸血鬼を、この地だって表向きには忌避している。
 吸血鬼を見つけたら、すぐさま憲兵に報告して討伐する事になっているのだ。

 ただ、カミルはこの地で人を襲ったことはなく、ひっそりと山奥の工房で暮らし、生き血が必要な時も、旧知の闇医者を介して血液だけを手に入れていたそうだ。
 よって、彼を吸血鬼と知るわずかな人々も、憲兵に告げ口をしようとしなかった。

 このあたりの憲兵は地位にあぐらを掻いた横暴な態度で、地元の人々からは非常に嫌われている。
 地元民からすればそんな憲兵よりも、吸血鬼とはいえ害なく暮らし、しかも暮らしにかかせない鉱石ビーズを作って売るカミルのほうを味方するのだ。

 今のディーナとて、きっとそうなのだろう。

 両親を亡くしてから、農場でずっと辛い過酷な日々を送っていた。
 農場の夫妻は他の使用人にも辛くあたり、その使用人たちの鬱憤は、一番弱くしかも夫妻の遠戚であるディーナに向けられた。

 カミルにも初対面の時は最悪な目に合わされたが、ここでは農場にいる時よりもはるかに人間らしく扱われている。

 それに、カミルの仕事に対する真摯な姿勢や信念は、素直に尊敬できるものだった。
 だからきっと……ほんの少し、ほだされてしまったのだ。



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