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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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享楽1-1

「奈津子をワシに任せて欲しい。田倉さん以上にしっかり可愛がる」
 岩井の顔が近づくと獣臭の中に葉巻や食べ物、アルコールの混ざり合った匂いがした。
「もちろん恵も一緒だ」
 髪をわしづかみにされ、小突かれる。「田倉さんの話はいやか」圧倒的な力の差。体力差を痛感する。
「しかし、不貞を止められなかったのは、ここの差よ」
 長着をかき分け、ふんどしの上から膨らみを握ってみせた。空気の抜けた風船をつかんだときのように巨大な手からグニュリとはみ出す。
「柔らかいのう。これでは田倉さんのように奈津子を悦ばすことはできん。困ったのう。やはり年には勝てん」
 指に絡まった義雄の髪の毛をフッと吹き、「どうしても譲る気はないのか」と三白眼で迫る。酔いと相まってもうろうとしているが、首を縦に振った。
「このワシに頭を下げさせたのだぞ」
 岩井の表情は険しい。それでも義雄はもう一度うなずく。
「取るに足らないこんな男がワシに盾突くとはのう」
 再び頭髪をつかまれるやいなや、パンという音と共に衝撃を受け視界がブレた。岩井が再び大きな手が振りかぶった。強い痛みと恐怖で身が竦み、手でガードする前に強烈な平手が炸裂した。脳が揺さぶられた。耳がキーンとしている。
 髪の毛をつかみ直されたとき、自分の口から悲鳴が聞こえた。女のような、か細い悲鳴だった。岩井は振りかざした手をおろして首を振った。頬が火で炙られたように熱い。
「失せたわ」
 火の付いた葉巻をくわえ、岩井は立ち上がった。例のガラス窓へ移動し、操作パネルのスイッチを押した。不透明のガラスが透明になり、寝室が見えた。出口に向かう途中、「おお、そうだ」と言ってこちらを振り向いた。
「お宅の会社の美人秘書だが、今はワシのもとで働いておる。頭のよい、よくできた女だ。スタイルは体を売り物にする女優にも劣らん」
 部屋の明かりを消し、「だがワシは奈津子のほうがいいのう」とつぶやいた。

 部屋から岩井がいなくなると恐怖で強張っていた体の緊張が解け、激しい痛みに襲われた。全身が骨抜きのような状態となり、立ち上がることができない。体が動かないのはワインか食べ物の中に薬物が混ざっていたせいもあるだろう。
 間近で仕事をさせるうち奈津子にほだされたのだろうか。初めからそのつもりで雇ったのかもしれない。その憎い夫を呼び出し薬物を飲ませ暴力で脅し、強引に別れ話を迫った。脅迫以外の何ものでもない。
 薄暗い部屋の中で目をつむり、しばらくソファーに寝そべっていると、まぶたに光を感じた。目を開けると隣の寝室に明りがついていた。岩井がつけたのだろうか。人の寝室をのぞき見しているようで、いやな気分になる。
 見える家具や調度品もこの部屋にあるものと引けを取らないくらい高級そうだ。寝室のベッドは以前義雄たちが使用していたダブルベッドよりはるかに大きい。二つ並んだ大きめの枕――クッション――がある。
 ベッドの上で田倉と奈津子が抱き合っている姿が脳裏に浮かんだ。苦しみに苛まれているとやがて、田倉の姿がなぜか岩井へと変わる。そして田倉に……岩井に……。見たくもない妄想に苛立ちが募る。
 人影が視界に入った。寝室に現れたのは岩井だった。羽織と長着を脱いだ襦袢姿であった。ひざから下は毛むくじゃらの素足が見える。岩井のふんどし姿を思い出す。風船のように膨らんだ股間。あれには度肝を抜かされた。だが、あの年齢でそこが硬直するとは思えない。そんな状態で奈津子を欲しがるものだろうか。そもそも、奈津子の方が拒むだろう。レイプしようにもできないし、よしんば何か別の方法で蹂躙したとしても、その場限りで終わりだ。もらい受けるなど、ほど遠い。思い出したくもないが、田倉のときのように奈津子が岩井に魅力を感じるとはとても思えない。世の中には親子ほど年の離れた夫婦はいるが、この岩井と奈津子という組み合わせは、何もかもがかみ合わない。暴力を使ったならば、それで終わりだ。共に暮らすことなど不可能だ。
 警察に訴えても、岩井であれば暴力行為をもみ消すことができるかもしれない。また、ワインに薬物など入れていないと言い張ることもできる。酔いつぶれていたとすればいい。だが、名の知れた政治家だ、こんなスキャンダルは命取りになるだろう。


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