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博士の天才
【コメディ その他小説】

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その6-1

 透明人間もダメ、幽体離脱もダメ、性転換もダメ。
 もはや手段は残っていないのか・・・。

 いや、まだ諦めるのは早い、方法はある・・・。

 透視眼鏡。

 どうしてこの方法に早く気付かなかったのか。
 冷静に考えてみれば、自分が透明になるより余程易しく、温泉や銭湯に行く必要もない、ただ眼鏡をかけて街に出さえすればいいのだ、多少大げさな眼鏡になるが外見を繕うことに興味がない博士はそんな事は気にもならない。

 優秀な博士の頭脳は原理を簡単に発見した、問題は透視の度合い。
 骸骨を見ても仕方がないし、上着だけ透視しても仕方がない、それに夏と冬では着ているものの枚数も違う。
 博士の導き出した答えは可変機能、カメラのピントを合わせるように透視の度合いを調整可能にすれば良い。

 布を何重にも重ねたものを壁に貼って調整を進め、ダイヤル一つで思い通りの透視深度に調整可能な眼鏡を完成させて博士は街に出た。

 ベンチに腰掛け、眼鏡のダイヤルを慎重に回す。
 
 向かいのベンチに腰掛けている女性の上着がすうっと消えて行く・・・博士は胸躍らせた。

 だがその先がいけない・・・・。

 上着が消えた頃には胸元に覗いていたブラウスも消えてしまう、そこまでは良いのだが、ブラウスが消えた頃には女性の顔の皮膚まで消えてしまう・・・博士にそれ以上ダイヤルを回す勇気はなかった。

 博士は眼鏡を外して涙をぬぐった。
 自分のささやかな願望はどうしてこうも叶えられないのだろう・・・。


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