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忘れられない時間
【レイプ 官能小説】

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『痴漢ごっこ』の記憶-1

「遅かったね、もう今日は帰って来ないのかと思った」
「ああ、うん。ごめん」
 深夜になって帰宅すると、部屋でユウが待っていた。
 面倒だから、もう彼には合鍵を渡してある。
 また勉強していたのか、折り畳み机の上にぶ厚い教材や資料が積み重なっている。
 毎度アパートの前で待たせるのも可哀そうになってきて、少し前に合鍵を渡してある。
 靴を脱ぎながら、桃子はそれとなく玄関前に置いた鏡で自分の顔や襟元をチェックした。
 大丈夫。
 妙な跡はどこにもついていない。
 見える場所には証拠を残さないようにしてくれた。
 叩かれた背中や尻の腫れも、だいたい翌日か翌々日には綺麗に治る。
 遊び方がスマートなのも、桃子が坂崎を気に入っている理由のひとつだった。

「ずっと勉強してたの? ごはん食べた?」
「いや、まだだけど。桃子が帰ってきたら、一緒に買いに行こうと思って」
「そっか……じゃあ、コンビニ行く?」
「うん。ついでに少しでいいから散歩したいな」
 大学に戻ってから、やらなきゃいけない勉強が山積みで疲れちゃうよ。
 ユウが笑いながら立ちあがって両手を上に伸ばし、背伸びをした。
 シャツの裾からちらりと見えた腹まわりに、以前よりもはっきりと筋肉が浮き上がっている。
 運動不足と体力のなさを実感したらしく、少し前から学校帰りに短時間ジムに通っているのだと言う。 
 ふとトレーニングマシーンだらけの部屋を思い出した。
 英輔のマンション。
 夢をあきらめてからも、彼はほとんど病的なまでに体を鍛え続けている。
 自分の体に1ミリでも余分な肉がついているのが許せないのだそうだ。
 そういえば美山も坂崎も、ジムだとか水泳だとかで常に体を鍛えていると言っていた。
 桃子自身は運動なんて大嫌いだから、彼ら男性陣の気持ちは微塵もわからない。

 アパートを出て、しんと静まり返った住宅街をユウと手を繋いで歩く。
 いつものコンビニで弁当やサンドウィッチ、それに飲み物なんかを適当に買う。
 そしてまた歩く。
 こういうときのユウはとても楽しそうで、だからいつまででも一緒についていってあげたくなる。
 たいした話はしていないのに、たくさん笑ってくれるのも嬉しい。
 シャッターの閉じられた商店街を抜け街灯もないような道を通って、家から30分ほどの距離にある公園へ。
 わりと新しい場所なのか、木々はきちんと剪定されて形よく整えられているし、あちこちに作られた花壇には作り物のように可愛らしい花がたくさん咲いている。
ベンチや遊具も綺麗で、とても居心地がいい。
 ここでしばらくおしゃべりをしてから帰るのが、最近ではふたりの夜中の散歩コースになっていた。


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