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THE 変人
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殻を破る-5

 翌日、早速瀬奈は一人で鉄夫夫婦の家まで遊びに行った。海斗の家を出てすぐには不安であった瀬奈だが、昨日海斗と歩いている姿を見かけて瀬奈を覚えている人らから声をかけられているうちに不安は消えて行った。瀬奈は海斗から聞いたデルピエロの大好物のビスケットを買い鉄夫の家に到着した。
 「ワンワン!ワンワン!」
家に近付くとデルピエロの吠える声が聞こえた。足音で分かっ田のだろう。門をくぐるとすでに由紀恵が玄関の扉を開けてこちらを見ていた。
 「よく来てくれたね、瀬奈ちゃん。どうぞ。」
 「こんにちは。ありがとうございます。」
そう言うと玄関の中にいたデルピエロたが我慢しきれずに飛び出して来た。
 「デルちゃん〜♪」
しゃがんでデルピエロを抱きしめる。尻尾がもぎれそうな程の歓迎は二日連続だ。よほど瀬奈が好きになったようであった。
 嬉しそうにまとわりつくデルピエロと一緒に中に入る瀬奈。中では鉄夫が笑顔で出迎えた。
 瀬奈がビスケットを出すとすぐさまお座りをして物欲しそうな様子で瀬奈を見るデルピエロ。
 「デルちゃんお行儀いい〜♪」
頭を撫でる瀬奈。
 「こいつは海斗がしつけたからな。あいつは巧いんだよ、動物を飼い慣らすのがね、昔から。」
 「そうなんですか〜。」
 「お手もお預けもするぞ?あと自分の名前以外の名前を言っても吠えないが、自分の名前を呼ばれると吠えるんだよ。」
 「え〜?本当ですか??」
 「ああ。試してごらんよ。」
瀬奈は興味深そうにデルピエロを見つめた。
 「ポチ!」
そう呼ぶと僕の名前は違うよと言わんばかりに尻尾を止め見つめている。
 「あ、本当だ。凄〜い!シロ!」
 「…」
 「タマ!」
 「…」
無反応だ。しかし瀬奈が名前を呼ぶと急に動きが変わる。
 「デルピエロ!」
 「ワン!」
いきなり尻尾を振り始め餌が我慢できない様子で口を開けて舌を出す。
 「きゃー!凄〜い!」
感動する瀬奈はビスケットを差し出す。パクッと咥えてガツガツ食べるデルピエロの頭を撫でる。
 「や〜ん、可愛い〜♪」
女の子らしい笑顔でデルピエロを見つめる瀬奈。
 「な!凄いだろ?不思議なんだよ海斗は。昔からね。」
鉄夫はどこか嬉しそうに言った。デルピエロと戯れる瀬奈を楽しそうに見ていた。そして腹が一杯になると瀬奈の隣にピタリと座り寝てしまった。
 「よほど瀬奈ちゃんに安心してるんだな。」
 「嬉しいです。」
温かい目でデルピエロを見つめていた。スヤスヤ眠るデルピエロを横目に鉄夫と由紀恵と色々と話をする。特に海斗の話は興味があった。
 「ワシはこんなだから真面目な息子とはウマが合わなかったんだよ。あいつは勉強ばかりで面白味に欠けてたからな。」
 「何言ってるのよ。親としてそれはいい事じゃない。」
 「ケッ!釣りもしない奴、面白くともなんともないわ!」
吐き捨てるように言った。
 「おじーちゃんも釣りするんですか??」
鉄夫は自慢気に言った。
 「海斗に釣りを教えたのはワシじゃ。息子に似ず海斗は活発な子でな、ワシと良く気が合うんだ。2人で良く釣りに言ったものじよ。」
 「そうなんですか。」
 「ああ。ワシの変人の血を受け継いだみたいだよ、海斗は。しかしワシよりも色んな人から好かれる不思議な力があるんだよな、あいつには。誰ともすぐ仲良くなっちゃうんだ。釣りでは負ける気がしないが、その点だけは負けを認めるよ。」
釣りに関しては譲れないという釣りキチプライドが可笑しく思えた。海斗と同じだ。誰がどう見ても2人の血は繋がっているのが分かるだろう。良く似ている。


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