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THE 変人
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殻を破る-1

 他人の名義で病院で検査を受けるなどという有り得ない行為をしてしまった瀬奈だったが、勝弘に診て貰ったおかげで物凄く気持ちが軽くなった気がした。自分は正体不明の病気だと思いずっと悩みながら生きてきた人生が大きく変わったかのように思えた。それだけ勝弘に、あまり病気だと思わない事だと言われた事が瀬奈にとっては大きなことであったし、海斗も変な気を使わず色々と本音で話してくれる事が嬉しく感じる。いつかは…、いや近い将来、海斗の元から離れて本来の自分の居場所に戻らなくてはいけない日がやってくる事は知っている。海斗の本来の生活の妨げになってはいけない事も知っている。しかし海斗に頼らなければ自分がまたダメになりそうな気がする。その気持ちの狭間で瀬奈は悩んだりもしていた。
 「瀬奈、これはから積極的に表へ出ようか。この街は田舎だ。いい人ばかりだ。みんなの優しさに触れる事も大事だからな。家に閉じこもってばかりじゃ色々とつまらない事ばかり考えてしまうだろ?そうゆう時間がないぐらいに人と触れ合って人生の楽しみを味わうのもいい。幸代もあちこち連れてってくれると言ってるしな。」
 「うん。そうだね。私、この街好きだよ?色んなとこ行ってみたい。」
 「お!前向きじゃん!」
親指を立てる海斗に、ついつい親指を立てて応えてしまい少し恥ずかしくなる。まさか自分が親指を立てるなどという行為をするとは思わなかった。しかしそういうフランクな事を出来るようになった自分を嬉しく思った。
 しかしまだ一人で街に出るのは怖い。日曜日に海斗と出かけるまでは普段通り家に引き込もっていた。掃除、洗濯などをしながら海斗の帰りを待つ瀬奈。食材を見ながら今日の夜ご飯は何にしようかと考える事が楽しくて仕方なかった。自分の作った料理を美味い美味いと食べてくれる海斗の姿を思い浮かべると自分が生きている存在意義を感じられるからだ。ずっと家の中に閉じ籠もっている瀬奈だが、海斗と会う前と後ではその意味は全く違うものなのであった。
 「明日、俺のじいちゃん家行くか。」
夕食を食べながらそう言った海斗。今まで家族の事など話題にも出した事がなかった海斗がそんな事を言うなんて意外に感じた。
 「海斗、おじぃちゃんとおばぁちゃんと仲が良くないんじゃ…」
出会った時、両親が祖父達と仲が良くなかった事は聞いた瀬奈は心配そうに海斗を見る。
 「父ちゃん母ちゃんとは仲悪かったけど、俺は仲いいよ。両親が死んだ時、一緒に暮らそうと言ってくれたぐらいだしね。ジーチャンとは良く釣りにも行くし今でもたまに会ってるよ。」
 「そうなんだ。うん、行きたい。」
 「じゃ、決まりな!」
海斗が会わせようとしてくれたと言う事は自分にとって良かれと思っての事だろうと感じた瀬奈。海斗の祖父らがどんな人達なのかも興味があった。
 「ほら、隔世遺伝ってゆーじゃん?俺さぁ、ジーチャンにそっくりなんだよ。良く言われる。」
 「そうなんだぁ。」
 「ああ。逆に父ちゃんはエラく真面目でさ。ジーチャンはいつも言ってたよ。アイツは真面目過ぎてつまらないってね。そんでもって母ちゃんが超気が強くてさ。自分の息子が尻に敷かれてる姿がどうも気に入らなかったんだよ。ま、その他にも色々あってどうもウマが合わなかったんだよね。でも俺はジーチャンとバーチャンが大好きだったから密かに一人で良く遊びに行ってたんだよね。」
 「へぇ〜。変人同士集まるとどうなっちゃうんだろうね?」
 「楽しいぞ?アハハ!オマエだって自殺志願者の引き篭もり変人なんだから変わらないよ!」
 「元です!!」
 「ハハハ、じゃあ今は違うんだ。」
 「うん。引き篭もりはまだそうだけどね。」
 「そうか。」
会話の中からも前向きな気持ちが伝わって来る事に安心した。祖父母の家に行くまでには交番、八百屋、肉屋など海斗にとっては顔なじみである店がたくさんある。それらの人々に瀬奈の顔を見せる事により、瀬奈が一人で街を歩いても不安がらないような状況にしてやりたいと言う海斗の思惑があった。海斗が女を連れて歩く事で色々とからかわれる事にはなるだろうが、この際耐えてやろうと決めたのであった。


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