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凪の夢
【女性向け 官能小説】

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変わらない場所-1


眠らない街。
そんな言葉がよく似合う都会で生きる事を決めたのは、閉鎖的で退屈で異物を嫌う田舎の郷里が大嫌いだったからだ。

娯楽の乏しい小さな離島の漁師町で生まれた私には父が居なかった。母は水商売の女で、町の外れで萎びたスナックを営んでいた。そんな私は幼少からずっと町の人間から異物扱いの視線を向けられて育ってきた。

同年には父が居ない事を囃し立てられ、大人達にはひそひそと有りもしない噂を立てられ。

唯一の味方であって欲しかった母は、私なんて居ないかのように自由な生活をしていた。
毎日のように酔って帰ってはアパートに知らない男を連れ込み、盛りのついた獣のような声をあげて抱かれてた。
そんな母をたった一人の肉親、家族だと思う事が死にたくなるくらいに苦痛だった。
大嫌いだった。こんな人から生まれた自分も、こんな生活も、こんな寂れた町も。ずっとずっと。

そんな母は五年前に他界した。
酒浸りが祟り体を壊したのだから自業自得だ。
母が亡くなっても、悲しい気持ちは無く、逆にやっと本当に一人になれたんだと酷く安堵した。
最低な娘だ。わかってる。だけど、いくら肉親でも、生きてく上で大事な事柄や気持ちをなにも分け与えて貰えた事のない人に愛や情など沸く筈がないでしょ?


どうせ同じ孤独を味わい生きるのなら華やかな街がいい。人の過去など無関心な人の集合体の中で、縛られる枷もなく独りで生きるほうがずっと耐えられると思ったからだ。

働きながら大学へ通うという理由を付けて島を出て、この街で暮らして十五年。一人は大変だったけれど、大学を卒業して念願だった出版社に就職が出来て。
歯を食い縛りながら生きてきた日々が報われ、やっと自分の為に頑張れる、生きられる道を歩く事が出来てきた矢先なのに、治らない病気が見つかっちゃうなんて…。


失意は私の心を大きく湾曲させた。
全てを失ってしまうかもしれない怖さや、色を無くしてゆく未来画図ばかりが私を支配した。
どんなに頑張っても、結局幸せを得る事なんて私には無理なんだ。
そんな考えしか浮かばなかった。

けれど、ただひとつだけ。
そんな湾曲した私の心を、縺れた感情をほどいてくれる場所を思い出したのだ。



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