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衛星和誌 −Qカップ姉妹−
【SF 官能小説】

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ジェニファー語り(1)-1

 オイオの連中の到着から、一夜が明けた。首都レアンドラは、今日も活況を呈しているようだ。
(コンジャンクションや女体調教というのは、正直、よくわからないが‥‥)
 わたしは朝のシャワーを浴びていた。平均からすれば豊かなバストに、指を滑らせる。標準重力下なので、マスクはつけている。だから、言葉は胸のうちだけでつぶやくことになる。
(わがスガーニーによる繁栄を、奴らはなぜ素直に享受しようとしないのか‥‥)
 日頃の疑問を胸で唱えながら、わたしはシャワー浴を終え、脱衣所で身体を拭き始めた。わたしの部屋の内装は、この脱衣所に至るまで、中期アテルマ様式というやつで統一されている。格調が高いそうだが、悲しいかな、わたしにはよくわからない。――ナディーカさまがたまにリリアにやらせるように、自分の乳房をつかみ、むにゅっと持ち上げてみた。
「‥‥‥‥」
 そのまま、モミモミ‥‥と自分で揉んでみた。あの調教士やナディーカさまがリリアの胸乳にしていた手つきを思い出して。強く、弱く。そしてまた強く。緩急をつけて。むにゅむにゅ。モミモミ。むにゅむにゅ‥‥。
「‥‥‥‥?」
 だめだ。くすぐったいだけで、これも何がいいのか、さっぱりわからない。どうもわたしは、日頃ナディーカさまにからかわれるとおり、朴念仁のようだ。
 今日はこれから、朝食の後、通常の生活パターンとは違い、わたしは自室のデスクに向かう予定だ。キーを叩くという、普段とは異なる公務のために、だ。

 わたしの名はジェニファー。スガーニーの軍人である。 
 一〇三九〇年‥‥と書き出して、わたしは悩んだ。
 というのも、わたしは書を記すことに慣れてはいない。わたしが受けた高等教育はスガーニーの軍学校のもので、報告書の類の書き方は学んだが、史記のそれは学んでいない。
 しかし、ナディーカさまからの命で、今回の事案の書を記すという役を引き受けたのだ。
 わたしからすれば、他にも適任者はいるだろうと思ったのだが、姫は鈴のような声で曰く。
「わたしはあなたを、今回の一連の事案の主軸として考えているのです。言葉は悪いですが、わたしのリリィは、言うならば武器・兵器の類でしょう。あの調教士は、それの開発にあたる技術者‥‥。どちらも駒に過ぎません。しかしジェニー、あなたは将軍だと‥‥」
「――ありがたいお言葉、まことに恐れ入ります」
 わたしはナディーカさまの前に跪いた。本心からだった。
「あなたが本物の将軍になるための、一ステップだと思ってください。――いえ、今回のコンジャンクションが終わり、木星圏連合が正式に誕生した暁には、わたしは国軍に、あなたを将軍として推薦いたします。約束しますよ」
「はっ。ありがたき幸せ‥‥!」
「そのためには、これくらいの物は書いてもらわねば。ただ優秀な兵士であるというだけの人材ひとは、将軍には向かないでしょう?」
 なかなか痛いところをお突きになる。そういう言い方はしなかったが、わたしが戦馬鹿ということか。しかし腹は立たず、むしろ、やってやろうという気が湧いてきた。
 乗せられたのかもしれないが、ここは乗ってみるべきだろう。わが国は、前将軍の引退以来、将軍不在の状況だ。このまま行くのかという空気が軍内にあり、わたしもそうなのかと思っていたのだが、なるほど、連合の達成とともに、将軍制度を復活させるおつもりなのか。
 その新体制の初代将軍に――。
(わたしが就任する‥‥)
 悪くはない。いや、いい話だ。功名心も刺激されようというものだ。そして、さらに姫は、とんでもないことを口になされた。
「末は――‥‥国防相? ナディーカは、本気ですよ」
 幼ささえ残るお美しいお顔。ナディーカさまは悪戯な瞳で、わたしの胸のうちを見やろうとする。わたしは、顔の前で手を振った。
「いえいえ、そこまでは‥‥! ――いえ、わたしは‥‥どこまで行っても、一軍人であります」
 自分が大臣などとは、夢にも思ったことはなかった。おそらく、国民議会をより己が手に掌握するため、事実上の側近であり意も通ずるわたしを、政界にも送り込みたいということだろう。言うならば、わたしも駒なのだ。しかしまた、この方にお仕えしてよかったと、心底思いもした。わたしが国防大臣に向くかどうかはともかく、駒は、尊敬に値する、優れた指揮官に使ってもらいたいものだ。わたしはおもむろに口を開いた。
「起工中のウレト=ヘカウ級戦艦の二番艦‥‥。あれの艦名にナディーカさまのお名前を戴けるよう、わたしも具申してみます」
 得意げな目を、わたしはしていただろうか。「偉大な魔女ウレト=ヘカウ」の二番艦だ。悪くはないだろう。ナディーカ姫さまは、美しく微笑んだのだった。
「まあジェニー、お上手ですこと」
「完成の暁には木星圏中を飛び回らせましょう、殿下の御名が全民の胸に刻まれますよう‥‥」
「あなたも、くすぐり方というものを覚えてきましたね。ふふふ‥‥。ナディーカとしては、例の外洋探査船にと、ひそかに思っていたのですが?」
 何のことを言っているのかわたしにはわかったが、おそらく、一瞬はぽかんとした表情かおをしただろう。先ごろ開始された、軍・官・民の三者による共同プロジェクトの、要となる船のことだった。その完成は、遠い将来のことになるはずで、ナディーカさまもそれは、ご存知のはずであった。
 しかしまた、頼もしくも思った。人の上に立つ者は、遠望を持っていなければならない。わたしは、かしこまって言った。
「あの船は‥‥ご存知のように、まだ計画上の、それも初期段階もいいところでして‥‥。が、姫さまがそうお望みでしたら、いずれ、そちらにも戴かせていただきましょう‥‥」
 それから姫さまとわたしは、優れた者だけが描くべき、未来の見通しについて語り合ったのだった。遠望ゆめを確かな現実のものにするために‥‥。


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