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THE 変人
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病名-7

 一時間ほど待ち昼を過ぎると午前の来診者がようやく終わった。
 「おっ、待たせたな。中へ入ってくれ。」
 「は〜い。」
海斗は図々しく、瀬奈はお辞儀をして席を立ち中へと入る。そして勝弘に勧められ椅子に座る。
 「どうしたんだ?海斗君が病院なんて。」
見知らぬ女性が気になりながら海斗に聞いた。
 「実は俺じゃなくてこの子を診て欲しいんだ。」
勝弘はニヤリと笑った。
 「だろうね。海斗君がそう簡単に病気になる訳がないもんな。」
 「分かってんなら聞くんじゃねーよ。」
少し馬鹿にされたような気分になりイラッとした。
 「進藤瀬奈さんって言うんだ。」
海斗が紹介すると瀬奈はお辞儀をして名前を名乗る。
 「進藤瀬奈と申します。宜しくお願いします。」
それを見た勝弘はまた海斗をイラッとさせるように笑って言った。
 「いや〜、海斗君とは正反対の礼儀正しいお嬢様だな!アハハ!」
 「るせぇっつーの!」
 「ハハハ!でもどうした?海斗君が女を連れてるだなんて信じられない事態だな。まさか何か悪い事でもしたか?」
 「ち、違うわ!おっちゃん、精神科医の免許持ってるよな?ちょっとこの子を診て欲しいんだ。」
 「まぁ持ってるが…」
どうやら訳ありの様相に気付く勝弘。瀬奈を見る勝弘に海斗は言った。
 「悪いが保険証とかはねぇ。だから俺の保険証でやってくんねーか?」
信じられない言葉に驚く勝弘。
 「はっ!?で、出来る訳ないだろそんな事!」
 「そこをなんとか!!」
頼み込む海斗に困惑する。
 「そんな事言われてもなぁ…」
 「頼む!」
手を合わせて頭を下げる。海斗が頭を下げて頼み込む姿など初めて見た勝弘はよほどの事なのだろうという事を察するが、聞けるお願いと聞けないお願いはある。さすがに常識的には無理な事だ。
 「海斗君、悪いが…」
そう言い掛けた瞬間、瀬奈の死角になる角度から写真をチラつかせる海斗。それを見た勝弘は慌てて海斗の腕を引き表へ出た。
 「い、いつ撮ったんだ!?」
 「いつだっけかなぁ??」
勝弘を慌てさせる写真…、それは看護婦とホテルから出てくる勝弘の写真であった。不倫現場を押さえた決定的な証拠だ。
 「あの子だよねぇ??」
受付で事務作業をしている看護婦を見る。
 「これ、奥様に渡ったら大変だよね??ま、俺は渡す気はないけど、何かの間違いで手に渡ったら大変だよね?」
勝弘から変な汗が滲んで来た。
 「お前、脅す気か…?」
海斗はニヤリと笑う。
 「人聞きの悪い事言うなよ。へへへ」
そう言って写真をしまう。
 「ねー、先生〜、お願い聞いてよ。困ってるんだよ〜。ねっ?」
 「くそっ、悪魔めっ…!わ、分かったよ。分かりましたよ!」
汗を拭いながらそう答えざるを得ない勝弘。
 「ありがとう、先生!」
親指を立てる海斗の少年のような笑顔が憎たらしく思える。勝弘は溜息をつき中へと戻る。
 「いいか?特別だぞ?誰にも言うなよ?こんな事がバレたら俺の首が危ないからな…。」
 「言わないっすよ〜。先生を頼りにしてるオジーサンオバーチャンを路頭に迷わす事なんて出来ないしね!」
 「お前、こんな時だけ先生先生呼びやがって…。」
 「頼りになるぜ、先生!良かったな、瀬奈!」
 「う、うん…。」
瀬奈は困惑気味の勝弘を見ると素直には喜べない。しかし何とか診てもらえそうで安心した。
 「あのな、信じらんねぇかも知れないけど…」
海斗は瀬奈と出会った経緯を勝弘に話した。勝弘はひとまず全ての話を黙って聞いた。確かに信じられない話ではあるが、海斗が今まで嘘を言った事がない事を知っている勝弘は全ての言葉を信用した。
 「そうか、そう言う事情か。ホント、ドラマのような話だな。うん、分かった。じゃあ今から検査しようか。海斗君は待合室で待っててくれ。」
 「ああ。おっちゃん、セクハラだけはするなよ!?」
 「バカか!?しないわ!」
 「なら安心した。」
海斗は手を振って待合室へと歩いて言った。


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