調教士として（３）-1
リリア――リリア・ザ・パーフェクトは、ナディーカ姫によるコンジャンクションの説明が始まり、具体的な点に及ぶ段階になって、呼ばれてやって来た。
（これが、ルリアの妹‥‥）
ピンクのメイド服、白いカチューシャ、茶系統の長い髪。大人びた知的な美貌、落ち着いた雰囲気も、オイオで見た写真のままだった。ピンクのメイド服の着用が誰の趣味なのかは不明だが、それにも関わらずの清楚、そして、気品。しかし、その胸もまた、写真で見たとおり、メイド服をあまりにも大胆に盛り上げていた。――こうして実物を見ると、本当に物凄いボリュームだった。
「ジェニー、後はお願い。リリィはそっちね」
リリア・ミアヘレナは、一言も発することなく、ナディーカ姫の指示に従う。そしてそこから、ジェニファーという女軍人が投影装置で立体映像を出し、説明を引き継いだ。リリア・ミアヘレナに見とれるのは中断して、あなたは内容を把握しようと努めた。
――「プレーヤー」の脳波は検知され、数値化される。検知する装置は取り付け式ではなく、本人は被検知を自覚できないにも関わらず、地球で言う嘘発見機をさらに向上させた機能を有しているということだった。ごく一部わからない用語もあったが、あなたが理解するに、つまり、相手側の攻め役に気をやればやるほど、その分、相手側に加算されることになるシステムのようだった。そして、その数値は、映像とともにほぼリアルタイムで放映もされ、視聴者が投票する際の判断基準となる。本人およびチームメイトは、コンジャンクションの最中にも、モニタ等によって、その数値や視聴者の投票傾向を知ることができる‥‥。
説明を聞きながらあなたは、ルリアらに対し、これまでとは違う気持ちを抱いていた。子どもの運動会を見守る親のような‥‥。
（いや、少し違うか‥‥）
まさにスポーツの
「えっ？」
だが、あなたはスガーニーの規模や各設備よりも、女軍人ジェニファーを通してスガーニー側から出されたコンジャンクションの、最終的な試合形式の説明にショックを受けた。
「ルリア――だけじゃない‥‥のか？」
あなたとミドリの声が、ほとんど重なった。あなたとミドリの声が、ほとんど重なった。ルリア、ジャニスさんも驚いているようだった。
向こうは――ナディーカ姫はなんと、スガーニーのリリアひとりに対し、こちらはルリア、ミドリ、ジャニスさんの三人を「プレーヤー」として指名するので、エントリーデータを出せ、と言ってきたのだ。三人の票数のパーセンテージの合計÷３、がオイオのプレーヤーの点数となるのだという。エントリーデータは、もちろん出すつもりでいたが、ルリアひとりとしか考えていなかった。
そしてさらに、スガーニー側は、ナディーカ姫とあのジェニファーという女軍人も攻め役として参加すると言い出してきた。それ自体も驚かされたが、ジェニファーの「プレーヤーの点数」という言い方も引っかかり、さらに説明を聞いて、ひっくり返ることになった。
攻められるプレーヤーだけでなく、攻め役の様子も「プレーヤー」と同じく投票の対象となり、その票数のパーセンテージもプレーヤーの点数に足され、その人数で合計パーセンテージを割った数字が、オイオの最終的なポイントとなる、と。この場合、攻め役とはつまり‥‥、
（――俺のことじゃないか！）
と、あなたは心のなかで叫んだ。スガーニー側は、あの黒調教士がそうだし、ナディーカ姫とあのジェニファーという女軍人も攻め役として参加するというのだから、やはりそうなる。
（つまり、実質的には、四対四の闘い、ということか――？）
全体としてはそうで、攻める人間も投票の対象になるというのなら、それは実質的に――。
（俺も、向こうが言う「プレーヤー」ってことじゃないか――！）
ルリアだけでなく、ジャニスさんとミドリも参加し、さらに、あなたの攻め方も加算されるなら‥‥説明ではジェニファーはそうは言わなかったが、算出方法は、
（調教士も含めた、四人分の投票数÷４‥‥）
ということになる。そして、こちら側の調教士は、他ならぬあなただった。
あなたはこれまで、今回のコンジャンクションについて、どこか他人事のような感触を持っていた。敗北側にスガーニーが課すかもしれない例の刑を聞いてからは、さすがに気を引き締めるようにはしてきたが（宇宙艇で気持ち悪くなったのは、その反動もあるかもしれなかった）、しかし、これで完全に目が醒める想いだった。あなたも、オイオ星の「戦士」なのだ‥‥！