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そして16年目の恋模様(クラス1-AB)
【女性向け 官能小説】

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ハードル-1

【ハードル】

ハードル(hurdle)。幾多もあるそれに慣れるためには、先ずは一番低いハードルから越えるのが常套だろう。

オレの両親は、ここ十年ばかり、顔を見せれば結婚の催促をしてきた。

『慎吾くんの爪の垢を飲め』

『千尋ちゃんのような孫の顔が見たい』

これは、一向に結婚をする気配を見せない一人息子に対して、慎吾の早婚を引き合いに出す両親の口癖だった。と言うことはオレの結婚の話は大賛成してくれるだろう。例えそれがどんな相手であれ…。例えそれが孫のような相手であれ…。

「結婚したい相手が居る」

慎吾の病室を出てからその両親に電話をしたところ、直ぐに連れて来いとのことだ。

「何言ってるんだ。こっちにも都合が有るんだぞ」

最後まで聞かずに電話は切られた。

「直ぐに来いだって」

千尋に伝えたところ、凄く緊張した顔をした。

「え〜、怖いよう」

「大丈夫だって、千尋もオレの親を知ってるだろ。絶対に反対されることはないって」

「う、うん…」

いきなりは可哀想かな。そう思ったが先伸ばししても仕方がないので、この足で実家に向かうことにした。

「こんな格好だよ、せめて着替えさせて」

「気にするな。オレの親は形を気にするヤツを嫌うから、そのままの方がいい」

「スカート短いけど、いいのかなあ」

千尋はスカートをピラリと捲った。健康的な太ももが目に眩しい。オマケに下着が割れ目に少し喰い込んでいた。また、昨日の千尋の淫らなシーンが頭を過った。

「だから刺激をするなって」

実家の前の駐車スペースに車を停めると、気の早い両親が玄関扉を開けて飛び出てきた。車を降りたばかりの千尋はビックリしてオレの後ろに隠れた。

「何だよ!ビックリさせるなよ。ほら、千尋、隠れるな」

オレは両親に文句を言ってから、千尋をオレの後ろから引っ張り出した。

「あら、千尋ちゃん、元気?今日はどうしたの?何かお父さんのお使いかしら?それよりもお父さんの具合はどう?退院まだかしらね」

何だか興奮気味の母親が、千尋の姿を見ると急きたてるように捲し立てた。

「は、はい、せ、先日はお見舞いいただいてありがとうございました。ち、父は来週から投薬治療に入ります」

「早く治って貰いたいわね〜」

「そうそう、早く治ってもらって、ウチの仕事を再開して貰いたいんだけどな。まあ、病気だから仕方がないか。先ずは、治療に専念だな。千尋ちゃんも、大変だろうが体を大事にしなさい」

父親が千尋を労るように言った。

「は、はい、ありがとうございます」

「ところで浩太、お前のお嫁さんはどこに居るの?」

母親がキョロキョロと車を覗き込みながら聞いたので、千尋が恥ずかしそうにそっと手を揚げた。

「あ、あたしです…」

それを見た両親はお互いに顔を見合わせた後、同じ反応を示した。

「え―――――っ!」

玄関先のアプローチで、両親の驚いた声が響いた。

その後が、大変だった。

何度も「犯罪だ」と繰り返す父親。「本当にこんなのでいいの?まだ若いから考え直しなさい」と繰り返す母親。

その度に、「嫁として認めて下さい」と何度も頭を下げ続ける千尋に、両親はようやく千尋が本気だと覚ったようだ。

「本当にいいのね」

1月後の結婚式を伝えた時には大騒ぎだった。

特に母親が喜んだ。

「千尋ちゃん、ありがとう、ありがとう」

千尋の手を取り、涙を流しながら、何度も何度も繰り返した。

「いえ、お母さま、こちらこそありがとうございます」

千尋も涙を流しながら、何度も何度もそれに応えていた。

父親は「ニュースだ!ニュースだ!」と親戚縁者に電話をしまくっていた。


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